研究課題
まず、ATF6beta cRNAを用いたin situ hybridizationを行い、ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質(MOG)ペプチドにより誘導されるマウスEAEモデルにおいて、ATF6betaの発現が増加すること、さらに局在としては主に神経細胞と一部のグリア細胞に発現することを確認した。また、RT-qPCRの結果からもATF6betaの発現は、ATF6alpha及びGRP78の発現と同様にEAE後増加することを確認した。次に、ATF6betaの重要性を明らかにするために、野生型(WT)およびAtf6b-/-マウスにEAEを誘導し、臨床スコア、脱髄、炎症細胞の浸潤、神経変性の程度などを比較検討した。その結果、Atf6b-/-マウスはWTマウスに比し、EAE発症後の運動麻痺、及び脱髄が重篤化することを確認した。一方、フローサイトメトリーやRT-qPCR、ウエスタンブロット、免疫組織化学、骨髄移植を用いた検討から、CD4陽性T細胞をはじめとする免疫細胞の浸潤や炎症性物質の産生、アストログリアの活性化については両マウスの間で有意な差は認めないことが明らかになった。さらに、培養神経細胞を用いた検討から、Atf6b-/-マウス由来神経細胞では小胞体ストレスに対する感受性が増加し、小胞体ストレス由来細胞死が増強することが明らかになった。以上より、主に神経細胞に発現するATF6betaは、EAEの病態下で細胞自律的、および非細胞自律的にそれぞれ神経細胞およびオリゴデンドロサイトを保護していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
これまでAtf6b-/-マウス、及び培養神経細胞を用いた解析を予定通り実施し、同遺伝子が小胞体ストレスに対して強い神経保護作用を示すことをマウスおよび培養細胞を用いて明らかにした。さらに、ATF6betaの下流遺伝子を同定するための網羅的解析もすでにスタートすることができた。
今後、ATF6betaがいかにして神経およびオリゴデンドロサイトに対して保護作用を示すかについて解析を進める予定である。特にすでにスタートしているRNA-Seqの結果を検証し、下流遺伝子の同定を試みる。
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