研究課題
中枢性脱髄におけるCD38やNADの役割を明らかにするために、CD38遺伝子を欠損したマウスを用いて、クプリゾン投与による中枢性脱髄モデルを作成した。その結果、CD38遺伝子欠損マウスにおいては、野生型マウスを比較して中枢性脱髄が顕著に軽減していた。また、脱髄に伴う神経細胞の軸索の障害も軽減していることが明らかとなった。それらは、CD38の遺伝子欠損により中枢神経系におけるグリア細胞(アストロサイトとミクログリア)の活性化の顕著に減少していることが原因であることが明らかとなった。CD38遺伝子欠損マウスにおいては、中枢神経系におけるNADの濃度が野生型マウスの2倍以上に増加していることが明らかとなった。また、培養グリア細胞を用いた実験からも、CD38の発現抑制やNADの添加がグリア細胞の活性化を抑制することが明らかとなった。これらの結果より、① CD38という分子はグリア細胞の活性化を促進し脱髄を引き起こす働きを持つこと、②NADという分子はグリア細胞の活性化を抑制する働きを持ち脱髄を抑制することが明らかとなった。多発性硬化症などの脱髄疾患において、CD38を抑制する事やNADを投与することが脱髄を抑制する新規治療法につながる可能性を見出した。今後は、グリア細胞においてCD38やNADがその活性化を制御する分子メカニズムや、脱髄モデル動物や神経炎症モデル動物をにおいてCD38を抑制する方法やNADを投与する方法により治療効果がみられるか否かを検討する。
2: おおむね順調に進展している
中枢性脱髄におけるCD38やNADの役割については確認することができた。現在、これらの結果を取りまとめ論文作成中である。また、CD38やNADによるグリア細胞活性化制御の分子メカニズムや再髄鞘化における役割については解析中であるため、おおむね予定通り研究は進んでいる。
当初の実験計画通り、中枢性脱髄後の再髄鞘化におけるCD38とNADの役割を明らかにすること。そして、それらの分子によるグリア細胞活性化神経炎症の制御機構を明らかにする。また、当初の計画にはなかったが、グリア細胞の活性化を引き起こす別の脳疾患モデルにおける役割も検討する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Auris Nasus Larynx
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10.1016/j.anl.2019.02.006
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http://med03.w3.kanazawa-u.ac.jp/event.html#event170127