研究課題/領域番号 |
18K06501
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
服部 剛志 金沢大学, 医学系, 准教授 (50457024)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 多発性硬化症 / アストロサイト / ミクログリア / 神経炎症 / ニコチンアミド / 脱髄疾患 |
研究実績の概要 |
ミエリンは神経軸索を覆い、神経伝達を高速にする役割を持つが、多発性硬化症などの脱髄疾患により中枢神経のミエリンが破壊(脱髄)されると、運動、感覚、認知機能の障害を引き起こす。この脱髄において、グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア)の活性化が脱髄促進因子であるが、それらを抑制することが脱髄疾患の新規治療法開発にとって重要である。 我々はクプリゾンという薬剤を使用し、マウスの中枢性脱髄疾患モデルを作成した。このモデルマウスにおいて、NAD消費酵素(CD38)の欠損による脳内NAD濃度の上昇が、グリア細胞の活性化を抑制し、脱髄を顕著に軽減させる事実を、我々は見出した。また、NADはミクログリアとアストロサイトの活性化と炎症性サイトカインの産生を抑制することも見出した。これらの結果をFrontier in cellular Neuroscienceに発表した。 これらの結果より、脳などの中枢神経系においてNADの濃度を上昇させることが、脱髄抑制の鍵となることが示唆される。そのためには、NADやNADの産生を増加させるNADの前駆体、またCD38の阻害剤などが脱髄疾患の治療に有効であると考えられる。現在は、実際に脳においてNADを上昇させる化合物を動物モデルに投与することで、その治療効果を明らかにする実験を行っている。また、NADは神経炎症を抑制する効果が明らかとなったので、神経炎症に関連する病態(神経変性疾患、神経発達障害など)におけるNADの役割も明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NADの脱髄及び神経炎症抑制効果については、ほぼ研究が終了し、令和2年度中に論文発表を行う予定である。また、NADのミクログリア抑制効果についてもそのシグナル解析は終了している。しかしながら、再髄鞘化におけるNADの役割についてはまだ解析が終了していないため、残りの年度でその解析を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、NADがミクログリアの活性化を抑制する分子メカニズムとNADが再髄鞘化においてどのような役割を行うかについての解析を行っていく予定である。 これらを行うことにより、多発性硬化症などの脱髄疾患における新たな治療標的の発見につなげたい。
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