研究課題
本研究の目的である,プリオン病症例の中枢神経系における神経変性疾患関連蛋白の沈着を検討する過程において,本年度は,継続して組織染色を準備すること,神経変性疾患の病理学的ステージを行うこと,プリオン病に直結する海綿状脳症,プリオン蛋白質の沈着の程度形態的に分類して評価を行うことが目的であった.また,昨年度報告した,プリオン病症例の網膜におけるPrPの沈着を継続して検討することも追加した.海綿状変性のステージングについては,先行研究などもふまえ,統一した方法で,中枢神経系の広範な解剖学的部位を検討できている.症例により,解剖学的部位による差があるので,現状ではまだ一定の結論がでているわけではないが,系統だってデータが集積されている.PrPの沈着については,まだ十分に目的の検索ができていないが,症例ごとに検討するなかで,新たな病型である,MM1+MM2Tが共存する場合(Am J Pathol. 2019 Jun;189(6):1276-1283)や,大脳と小脳で異なるPrP蓄積を認める症例(JMA J. 2019;Sep; 2(2):148-154)を見いだし報告できた.タウ,アミロイドβ,αシヌクレイン,TDP-43のステージングに関しては,病理標本が準備できた症例に関しては,診断過程としての評価はおおむね終了している.TDP-43については,すべての切片の染色は施行できていないものの,TDP-43が初期に沈着すると考えられる部位に陽性所見をみることは極めて稀である.平成31年度は病理解剖数が9例になり,症例がさらに追加されたので,継続して検討を行い,最終的な結論が得られるように研究継続をする.
3: やや遅れている
2019年度の当初の目標は,プリオン病症例の基本的な組織染色や免疫染色に加え,基本な病理学的ステージングを施行することである.個別の症例に関しての評価は終了しているものも多いが,新規解剖症例が多いこと,当初は予想していなかった,従来の枠組みでは評価できない症例が発見され,研究推進のためにも報告を要するといったことも影響したものである.ただし,新規概念を見いだせたことは,今後の研究推進にとっても重要であった.
新規症例が多数加わったことで,検討対象が増加しているが,個別症例の評価方法はおおむね確立できているので,継続的に評価を行い,データのまとめ,解析に移行する.
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JMA J
巻: 2 ページ: 148-154
10.31662/jmaj.2018-0060
Am J Pathol
巻: 189 ページ: 1276-1283
10.1016/j.ajpath.2019.02.012.