研究実績の概要 |
本研究の目的である,プリオン病症例の中枢神経系における神経変性疾患関連蛋白の沈着を検討する過程において、2020年度も継続して病理解剖の症例を継続して行い、病理組織標本の作成と検索を継続した。新規病理解剖例は15例の症例が追加された。あらたに12例の神経病理所見を検討した。 アミロイドβとタウタンパクの組み合わせから判定するアルツハイマー病病理の程度は、クロイツフェルト・ヤコブ病だけに限り、NIA-AAの国際分類によって、アルツハイマー病らしさを4段階に分類すると、none 56%, low 33%, intermediate 8%, high 3%。タウの拡がりをBraak stageで分類すると、0;36%, 1-2;53%, 3-4; 6%, 5-6 2%であった。アルファシヌクレインの沈着としてレビー小体は8%にみられた。TDP-43に関しては染色部位を含め再施行中である。 海綿状変性のステージングについては、統一した方法でデータを蓄積しているが、上記変性疾患関連タンパクとの検討はまだできていない。 COVID-19による種々の制限の中、病理解剖は継続して行うことができたが、病理標本の評価等に関しては遅れがみられ、本来最終年度であったが、1年間の延長を行った。本研究による病理検索もふまえ、MM2型のCJD診断指針の提唱に関する貢献もできた(J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2020 Nov;91(11):1158-1165)。 疾患分類としては、日本のクロイツフェルト・ヤコブ病の特性を反映して、V180Iの遺伝性症例が比較的多い。この変異は、比較的高齢者にみられることが多いため、病理的に、タウやアミロイドが沈着しやすい傾向にあったが、単なる年齢によるものかどうかは検討中である。
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