研究課題/領域番号 |
18K06510
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
吉川 雅朗 日本大学, 医学部, 助教 (50451696)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 神経血管ユニット / RNA-seq解析 |
研究実績の概要 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンのみが選択的に障害を受けるが、その中でも障害を受ける運動ニューロンと受けにくいニューロンがある。障害のされ方の違う不均一な細胞集団を観察しているだけではALSの正確な把握は困難であると考え、本研究では軸索変性した運動ニューロンにターゲットをしぼって組織学的解析と網羅的遺伝子発現解析を行うことで、障害を受けやすい運動ニューロンの特徴を明らかにする。 ALS発症時には多くの運動ニューロンがすでに変性・脱落しているため、申請者は、ALSモデルマウスを用いて発症前の早期変化の特定を進めてきた。一連の解析により、運動ニューロンだけでなくニューロンを取り囲む微小環境も変化している可能性が示唆された。そこで、神経血管ユニットに注目し、その構成要素の変化を調べた。まず、発症前の脊髄において、障害の受けやすさが異なる前脛骨筋(速筋)とヒラメ筋(遅筋)を支配する運動ニューロン群周囲の毛細血管密度を解析したところ、ALSモデルマウスの両方の領域で低下しており、それぞれの領域の分布密度は異なっていた。さらに、脊髄前角でタイトジャンクションが減少しており、血管を形成する基底膜の変性やストリング血管、ペリサイトの増加が観察された。以上から、ALSモデルマウスの脊髄において、運動ニューロンだけでなく神経血管ユニットも発症前に障害されており、その微小環境の変化は運動ニューロンに影響を与える可能性があると考える。 また、発現変動遺伝子のデータを用いた解析を進める中で、神経栄養因子やモノアミン、運動機能等に関わる因子が変動していることを明らかにした。 今後は、軸索変性の有無で比較解析し、ALSで早期に軸索変性する運動ニューロンはどのような特性があるか明らかにする。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、軸索変性した運動ニューロンの形態学的な解析を進める予定だったが、運動ニューロンを取り囲む微小環境(神経血管ユニットや細胞外マトリックス等)が大きく変化していることが示唆されたため、そちらを優先して解析を進めた。そのため、形態学的な解析が計画より遅れている。 発現変動遺伝子データを用いた解析から、神経変性に関連する遺伝子群やカスケードが絞れてきた。ターゲットは異なるが、次年度以降も行う解析手法の流れを組み立てることができたので順調である。 よって、全体的に見れば、やや遅れているが順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
軸索変性した運動ニューロンの形態学的な解析を進める。具体的には、脱神経前後に逆行性トレーサーを注入することで、軸索変性した運動ニューロンを特定する。これにより、速筋(前脛骨筋)を支配する運動ニューロンプール内において、軸索変性した運動ニューロンが散在して分布しているのかそれとも特定の部位に限局しているのかを明らかにする。また、神経血管ユニットも発症前の早期に障害されており、その微小環境の変化は運動ニューロンに影響を与える可能性が示唆されるため、運動ニューロンとの相互関係を明らかにする。必要に応じて、脊髄を透明化し、神経血管ユニットと軸索変性した運動ニューロンの分布を立体的に解析することを検討する。 並行して、レーザーマイクロダイセクションで解析対象を回収後、RNA-seq法により軸索変性した運動ニューロン特異的に変動する遺伝子を同定する。
|