研究実績の概要 |
神経疾患の治療が困難である大きな理由は、神経系の乏しい再生能力にある。それは、神経再生を妨げる機構の存在が原因あり、その細胞内のシグナルに関連した因子としてCRMPが注目されている。我々は、CRMPsの脳発達における機能解析に加えて、神経再生における役割について脊髄損傷モデルを用いた検討を行なった。成果として、CRMP4KOマウスにおいて神経炎症が軽度で機能回復が良いことを見出した。また、MPTP誘導型パーキンソン病モデルでもMPTPのドーパミン神経毒性がCRMP4KOでは軽症であることを報告している。本研究はCRMPをターゲットとした神経変性疾患治療法開発に向けて、ヒトの病態に近いモデルマウスを用いて、CRMPの遺伝子変異の効果及びLKEなどの薬剤の効果を明らかにすることを目的とした。 6-OHDAを片側線条体へ注入すると注入側の中脳黒質のドーパミン神経細胞の脱落を引き起こす。このモデルで、野生型とCRMP4KOでの比較を行ない、CRMP4KOマウスにおいてドーパミン神経細胞の脱落が軽度であり、惹起されるミクログリアの反応も抑制されていることを明らかにした(Li et al., Neurochem Res 2020)。また、MPTP誘導型パーキンソン病モデルにおいて、LKEが中脳黒質のドーパミン神経の脱落と炎症反応を抑制することを報告した(Togashi et al., J Neurol Sci 2020)。現在、よりヒトのパーkンソン病の病態に近いモデルであるalpha-synucleinトランスジェニックマウスへの遺伝子改変及び薬剤の効果について検討を続けている。
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