研究課題/領域番号 |
18K06513
|
研究機関 | 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構 |
研究代表者 |
宮田 宗明 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (90582007)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 細胞間接着分子 / アストロサイト / 神経細胞 / 三者間シナプス |
研究実績の概要 |
生体内のアストロサイトは多数の細かい突起を有し、その突起を介してシナプスの構造や機能に重要な役割を果たしているが、アストロサイト突起とシナプスとの接着については生体内に近い形態を示すアストロサイトの培養法が確立されていなかったため、ほとんど解明されていない。研究代表者は、生体内で観察される多数の細かい突起を持ったアストロサイトと神経細胞の共培養系を新たに開発し、このアストロサイト-神経細胞共培養系を用いてアストロサイトのシナプス形成・維持における役割と作用機構を明らかにすることを目的にしている。平成30年度は、まず、興奮性シナプスにおけるアストロサイトのシナプス形成・維持における役割と作用機構に焦点を絞り、様々な条件で培養したアストロサイト-神経細胞共培養系を用いて解析した。高解像度顕微鏡および電子顕微鏡を用いた解析により、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子やシナプス分子、アストロサイトの機能分子の詳細な局在部位やアストロサイト-神経細胞共培養系のシナプス周囲の構造が生体と類似した構造であることが明らかになりつつある(電子顕微鏡を用いた解析は東京大学大学院医学系研究科 岡部繁男教授との共同研究)。さらに、アストロサイト-神経細胞共培養系を用いた機能的解析として、電気生理学的手法を用いて興奮性シナプスの機能におけるアストロサイトの役割の解析にも着手した(電気生理学的解析は大阪医科大学 栗生俊彦博士との共同研究)。 また、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子を欠損したアストロサイト、または神経細胞を用いてシナプス形成・維持における役割を調べるため、これらの欠損マウスの導入、繁殖をおこない、解析を開始した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、興奮性シナプスにおけるアストロサイトのシナプス形成・維持における役割と作用機構に焦点を絞り、新たに開発したアストロサイト-神経細胞共培養系を用いてアストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子の解析と、様々な条件で培養した際、またはこれらの分子を欠損したアストロサイトや神経細胞を用いた際のアストロサイトの形態とシナプス分子の動態を解析することを計画していた。高解像度顕微鏡および電子顕微鏡を用いた解析により、これらの分子の詳細な局在部位やアストロサイト-神経細胞共培養系のシナプス周囲の構造が生体と類似した構造であることが明らかになりつつある(電子顕微鏡を用いた解析は東京大学大学院医学系研究科 岡部繁男教授との共同研究)。アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子を欠損したアストロサイトや神経細胞を用いた解析は、これらの分子の欠損マウスの導入・繁殖に時間を要したため、現在、この解析を順次おこなっている。このため、次年度に予定していたアストロサイトの機能分子の局在を前倒しして解析し、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子がこれらの機能分子と共局在することが明らかになった。さらに、電気生理学的手法を用いて興奮性シナプスの機能におけるアストロサイトの役割の解析にも着手した(電気生理学的解析は大阪医科大学 栗生俊彦博士との共同研究)。 本研究によってアストロサイト突起とシナプスの間の接着の形成・維持機構の一端の解明につながることが期待され、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度に引き続き、アストロサイト-神経細胞共培養系を用いて興奮性シナプスにおけるアストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子の解析をおこなうとともに、機能的な解析として電気生理学的解析や細胞内のカルシウムイオン変化の解析をおこなう(電気生理学的解析は大阪医科大学 栗生俊彦博士との共同研究)。また、アストロサイト突起とシナプスの接着部位に局在する細胞間接着分子との共局在が確認された機能分子については、これらの分子をHEK293細胞に発現させて、免疫沈降により相互作用の有無を調べる。さらに、これらの成果を論文発表するための準備も進める。 これらと並行して、抑制性シナプスにおけるアストロサイトのシナプス形成・維持における役割と作用機構についても同様の手法を用いて解析をおこなう。
|