研究課題/領域番号 |
18K06514
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
神谷 温之 北海道大学, 医学研究院, 教授 (10194979)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軸索 / 海馬 / サブセルラー記録 |
研究実績の概要 |
本研究では高速ネットワーク律動の発振の細胞メカニズムを検討する。とくに遠位軸索での異所性バースト発火の発振に関与する可能性について、申請者らが開発した軸索サブセルラー記録、ケージ解除による光操作や、数理モデルを用いたシミュレーションなどの多角的な電気生理学的アプローチを駆使して追及する。本年度は、昨年度までの研究で得られた遠位軸索へのカリウムチャンネル阻害剤4APの局所投与による海馬苔状線維軸索の発振に関連して、ケージド化合物Rubi-4APの光分解実験により同様に発振が生じるか検討した。海馬苔状線維の単一苔状線維終末からの直接記録を行い、遠位軸索にあたる記録部位周辺に局所灌流法によりRubi-4APを投与しただけではバースト発火は生じないが、局所的な光照射を組み合わせて遠位軸索部(CA3野透明層)のカリウムチャンネルを阻害すると、速やかに苔状線維終末からバースト発火が記録された。光分解実験では光照射領域を遠位軸索部に限局したため、4AP作用の空間的な範囲を限局できると考えられ、生理的な活動電位発生部位である苔状線維の近位軸索ではなく、遠位軸索でのカリウムチャンネル阻害が異所性バーストを引き起こすことを確認した。今後、このバースト発火と細胞体である顆粒細胞の発火の関係について明らかにするために、細胞体と軸索の分離などの手法により検討を進める予定である。また、ガンマ律動を抑制するGABAA受容体阻害薬やAMPA受容体阻害薬の効果を調べ、ネットワーク律動との関係について追及する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに検討した4-APの局所投与実験では投与した4APの作用範囲を限定できなかったが、ケージド化合物Rubi-4APの光分解実験により遠位軸索でのカリウムチャンネル阻害が異所性バースト発火を引き起こすことを確認した。以上から、おおむね順調に研究が進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
単一苔状線維終末からの直接記録と、4アミノピリジンの局所灌流法による投与とスライスの部分的な切断を組み合わせて、遠位軸索での異所性バースト発火の発振を確認する。また、これらの結果に関する論文投稿に向けて、マウス海馬スライスを用いた実験的解析をさらに進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
オンライン授業への対応や在宅勤務での作業の増加により実験と論文執筆が遅れた。次年度では主として論文投稿料としての使用を計画している。
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