研究課題/領域番号 |
18K06515
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
櫻井 勝康 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 助教 (70507920)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 体温 / Trpa1 / 恐怖 |
研究実績の概要 |
生物は恐怖刺激に対し、生存戦略の中で最も合理的な行動反応と生理反応を瞬時に選択・実行する。申請者らは、マウスにすくみ行動を引き起こす特定の恐怖臭が急激な体温・心拍数の低下を引き起こすことを明らかにしている。本研究提案では、恐怖刺激下で体温・心拍数を急激に低下させる生体恒常性維持機構を超越した脳内の緊急用スイッチを探索・同定することを目的とする。本研究では、マウスにおいて恐怖刺激(恐怖刺激臭)の情報が傍小脳脚核―視床下核―孤束核へと伝達されることにより体温低下を引き起こすことを明らかにした。恐怖刺激により、傍小脳脚核の特定の神経細胞群が活性化される。この神経細胞群の活性化は、恐怖刺激臭に対して恐怖反応を示さないTrpa-1ノックアウトマウス(Trpa-1 KO)では認められなかった。恐怖刺激により活性化する傍小脳脚核の神経細胞群を特異的に刺激することにより、体温低下が誘発された。この傍小脳脚核の神経細胞群は視床下核に投射している。野生型マウスの視床下核は恐怖刺激により活性化するが、Trpa-1 KOではその活性化が認められなかった。視床下核へ投射する傍小脳脚核の恐怖刺激に対して活性化する神経細胞群の軸索末端を刺激することにより、体温低下が観察された。すなわち、恐怖刺激の情報は傍小脳脚核から視床下核へ伝達され、体温低下を引き起こすことが示唆された。孤束核は体温調節に関わる神経核の一つである。恐怖刺激によって活性化する視床下核の神経細胞群の一部が孤束核に投射していることを明らかにした。孤束核へ投射する視床下核の神経細胞群を刺激しすることにより、野生型マウスにおいて体温低下が誘発された。以上の結果から、マウスにおいて恐怖刺激情報が、傍小脳脚核―視床下核―孤束核へと伝達されることにより、生理反応として、体温低下が引き起こされることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスにおいて、特定の恐怖刺激に対して体温の急激な低下が引き起こされることを明らかにした。さらに、その体温低下に関わる神経回路を明らかにした。本研究で発見した体温調節の神経回路は、これまで報告されている体温調節に関わる神経回路とは異なる新規の神経回路である。
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今後の研究の推進方策 |
視床下核から孤束核に伝達された情報が、さらにどの神経核に伝達されることによって、体温の低下を引き起こすのかを明らかにする。さらに、恐怖刺激時における、視床下核の神経活動をリアルタイムでイメージングすることも目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の投稿が次年度に延びてしまったため、論文掲載費が未使用となってしまった。次年度は論文を投稿予定であり、その費用に使用する。
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