研究課題/領域番号 |
18K06517
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
杉内 友理子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (30251523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 輻輳 / 上丘 / 中脳網様体 |
研究実績の概要 |
立体視のためには様々な情報が用いられるが、中でも、左右の目が離れているために網膜に映る外界の像が異なる(両眼視差)ことにより生じる奥行き知覚によるところが大きい。両眼視は、動物が高等になり、眼球が顔の外側から正面に位置するようになり、同時に両眼の視線が一点で交わるようにするための輻輳性眼球運動(両眼球の内転または外転)が起こるようになって初めて可能になった機能である。立体感覚に基づく空間識の形成には頭頂葉後部が深く関与することが知られているが、それには視覚情報のみでなく、眼球運動情報(遠心性コピー)と統合されることが必要でであると考えられるが、その神経機構はほとんど解明されていない。本研究においては、これまでの我々が行ってきた輻輳性眼球運動の神経機構の解析をさらに進め、視覚系の情報処理機構との統合による立体視の神経機構の解明に寄与することを目的としている。 これまでに我々は、輻輳性眼球運動の神経機構の解析を行い、ネコにおいて、輻輳性眼球運動に関する入力が、従来急速眼球運動の中枢とされてきた上丘から内直筋運動細胞に存在し、その一部は、動眼神経核の背側部の中心灰白質内の領域を介することを明らかとした。その過程において、中脳網様体内にも水平性の眼球運動に関与する運動細胞に投射する核上性細胞が存在することが明らかとなった。本研究では、この中脳網様体に注目して神経標識物質を用いた解剖学的手法、および上丘の輻輳関連領域の電気刺激を含む電気生理学的手法により、この領域が上丘からの輻輳関連の出力を伝える領域である可能性を示した。中脳網様体は、水平性サッケードに関与することが報告されているが、本研究の結果により、中脳網様体が、距離の異なる2点間の視線の移動の際に必要な、輻輳を伴う非共同性サッケードにおいて、サッケードと輻輳性眼球運動の指令の統合の場として重要な役割を果たす可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで知られていなかった中脳の領域が、上丘からの輻輳関連の出力を伝える中継部位である可能性を示すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
ネコにおける輻輳性眼球運動の出力経路の解析をさらに進める。上丘は部位により性質の違う眼球運動の発現に関与することが知られているため、個々の個体において、上丘の刺激部位を変えて最大の効果をもたらす部位はどこかを決定し、電気生理学的に出力経路を解析する。その後、神経標識物質を用いて、その部位の入出力関係を明らかにする。次にネコにおけると同様の神経機構がサルでも存在するかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度より開始予定のサルを用いた研究では、脳が大きいため特に脳標本作成に関して多くの出費が予想され、その支出に備えるため、今年度は当初の計画よりも旅費を節約した。今回発生した次年度使用額は、当初次年度に予定していた組織切片作成用の費用に合算し、消耗品購入の財源に充てる予定である。
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