研究課題/領域番号 |
18K06518
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
菱田 竜一 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (90313551)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / 生理学 / 可視化 / 認知科学 / 痛覚 |
研究実績の概要 |
1、皮質イメージングにより既に注意干渉関連領域として同定・解析をおこなってきた頭頂連合野と、痛覚との関係について解析した。頭頂連合野を電気刺激等により賦活すると、一次視覚野の視覚応答や聴覚野の聴覚応答は抑圧されることを示し、同領野には感覚野に対する応答抑制機能があることを明らかにしてきた。ところが、体性感覚野の応答に対しては必ずしも同様の抑圧が働かない場合がある事を見出した。充分に麻酔したマウスの後肢足の裏に白金電極を設置し、アナログアイソレータを使用して250 Hzサイン波の電気刺激をおこなった。この周波数の電気刺激はAδ繊維を活性化して一次痛覚を誘起するものであり、体性感覚野の後肢相当部位での痛覚応答はフラビンイメージングによって確認することができた。ところが、同刺激と同時に頭頂連合野を電気刺激しても、体性感覚野・後肢相当部位での痛覚応答は変化せず、応答の時間的空間的パターンや大きさは頭頂連合野の賦活の有無に影響されなかった。以上から、頭頂連合野の抑制機能にはモダリティによる差異があるかもしれないという可能性が示唆された。つまり、痛覚という生物個体の生存にとって極めて重要な感覚は他のモダリティとは異なり、安易に減弱されないように抑圧メカニズムが異なるか存在しないのかもしれない。また実体験から推測するに、極度の注意集中をおこなえば痛みを忘れることができることから、同実験においても頭頂連合野をもっと強く賦活すれば今回の痛覚応答も抑圧されるのかもしれないとの考察を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前々年度末に研究代表者が所属する研究室の教授が定年退職を迎えた後、研究所が組織再編されることとなった。私が引き継いで管理していた実験室も再編の対象となり、備品・薬品等の整理や移動に膨大な時間がかかった。さらに、移動後にも機器の設置や設定・調整の業務にも時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
1、頭頂連合野の抑制機能にモダリティによる差異があるかを調べる。充分に麻酔したマウスの後肢に電極を設置してサイン波電気刺激をおこない、触覚刺激または痛覚刺激を与える。同時に頭頂連合野を電気刺激して賦活させることで、体性感覚野での触覚応答や痛覚応答の変化を解析する。頭頂連合野を賦活させる電気刺激についても検討し、注意干渉と痛覚との関係について考察したい。 2、皮質イメージングにより同定された頭頂連合野が、注意干渉関連領域として痛覚に関与していることを行動解析によって明らかにする。手術により頭頂連合野を皮質破壊したマウスや、皮質に切れ目を入れて頭頂連合野と体性感覚野・後肢部位とを結ぶ経路を遮断したマウスを作製する。適切な回復期を経たのちにそれらのマウスの痛覚閾値を測定する。測定には、後肢足蹠への電気刺激に対する後肢逃避応答の測定や、von Frey フィラメントを足蹠に押しつけ同じく後肢逃避応答を測定するvon Frey法を用いる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 前々年度末に研究代表者が所属する研究室の教授が定年退職を迎えた後、研究所が組織再編されることとなった。私が引き継いで管理していた実験室も再編の対象となり、備品・薬品等の整理や移動に膨大な時間がかかった。さらに、移動後にも機器の設置や設定・調整の業務にも時間を要した。そのため、研究の進展を遅らさざるを得なくなり、使用する予定であった研究費が未使用となったから次年度使用額が生じた。(使用計画) 頭頂連合野から痛覚に及ぼす作用を解析するために、皮質イメージングによる解析や行動解析で使用するマウスや試薬、およびデータ解析用のパソコンなどの購入に使用する。
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