研究実績の概要 |
視床下部弓状核は末梢のエネルギー代謝情報(ホルモン、栄養素)を受容し、室傍核などの満腹中枢、摂食中枢の活動を調節す ることで摂食とエネルギー消費 の恒常性を調節する。 補体C1qファミリーはシナプス前終末から分泌され、神経伝達物質受容体を集積し、シナプス形成、伝達調節に働く。先行研究、予備検討からC1qファ ミリーに属するC1q like protein(C1ql)3,およびCbln4は視床下部ニューロンの一部に発現し、視床下部ニューロンのシナプス伝達調節を介し全身のエ ネルギー代謝に大きく寄与することが示唆された。そこでC1ql3、Cbln4を発現する視床下部ニューロンのサブ タイプ、投射先、シナプス伝達様式とエネルギー代謝への寄与を明らかにすることを目的として、研究を遂行した。 in situ hybridizationおよび免疫組織染色の結果から、C1ql3は視床下部外側野オレキシンニューロン、弓状核、室傍核および視床室傍核に発現することを見出した。C1ql3欠損マウスは、一晩絶食後の再摂食時に有意な過食・体重増加が観察され、C1ql3がエネルギー代謝調節に寄与することを示した。更に、耐糖能試験、イ ンスリン負荷試験の結果から、同欠損マウスは顕著なインスリン感受性を示すことを見出し、、膵臓ラ氏島にC1ql3の発現を観察した。以上よりC1ql3は全身の糖代謝制御に寄与することが示された。 Cbln4は視床下部弓状核の摂食亢進ニューロンであるAgRPニューロンの軸索上に発現し、絶食負荷によりシナプスへ集積し、AgRPニューロンの抑制性シナプス伝達を調節することが示された。Cbln4欠損マウスの摂食/エネルギー代謝を検討 した結果、体重変化を伴わず有意な摂食亢進をすることが見出された。AgRPニューロンの摂食更新作用の新たな機序としてCbln4によるシナプス形成を介した制御系を提示する。
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