研究課題/領域番号 |
18K06529
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
石川 太郎 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50547916)
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研究分担者 |
志牟田 美佐 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (70609172)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小脳 / 大脳小脳連関 / 光遺伝学 / オプトジェネティクス / 体性感覚 / 運動学習 |
研究実績の概要 |
本研究は、皮質橋小脳路と皮質下オリーブ核小脳路という2つの重複する伝達経路を介した大脳小脳連関の機能的意義を明らかにすることを目的としている。計画初年度である平成30年度においては、特に皮質下オリーブ核小脳路について、大脳皮質のどの領域からの投射が小脳皮質のCrus Ⅱに関連しているのかを明らかにするための機能的マッピングを光遺伝学的手法を用いて行った。その結果、これまでに確認されていた皮質橋小脳路と同じく、運動野よりもむしろ一次体性感覚野が小脳への投射に関与していることが判明した。さらに、皮質橋小脳路の大脳小脳連関についても引き続き研究を進め、種々の麻酔薬および覚醒状態が、橋核を介した大脳小脳連関にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、無麻酔覚醒状態に比べて、イソフルラン麻酔はこの伝達を強力に抑制するが、ケタミン麻酔はむしろ増強する傾向にあることが判明した。この結果により、大脳皮質の活動状態(state)が大脳小脳連関に大きな影響を与えることが明らかになった。また、小脳顆粒細胞における複数の入力苔状線維からのシナプス入力信号の統合の様式については、本研究の開始前から行われていたものであるが、本研究とも密接な関連があるため、取得済みのデータについての詳細な解析を引き続き進めている。その結果として、複数入力のタイミングにずれがある場合には、加算よりもむしろ後方抑制的な相互作用をもたらすことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
皮質橋小脳路と皮質下オリーブ核小脳路の双方について、研究の進展があった。これにより、今後これらの2経路を独立的に抑制または活性化するための基本的情報が得られた。また、麻酔下のみならず、無麻酔覚醒状態でも同様の実験を行う方法を確立できたことで、今後の覚醒状態ので行動実験を行う基礎的条件が整えられた。
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今後の研究の推進方策 |
さらに、今後の課題として、皮質橋小脳路と皮質下オリーブ核小脳路を独立に抑制または活性化する方法の導入を行う必要があり、これを可能にする新たな遺伝子改変動物の導入を行う予定である。また、上述の通り、大脳皮質の活動状態の重要性が明らかになったことから、今後の問題として、自然睡眠のレベルの違いにより、大脳小脳連関がどのような影響を受けるかという問題にも注意を払う必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の後半に予定していた実体顕微鏡と脳固定器の購入を次年度に延期したため、繰越額が生じた。これらの装置は、現有の設備の拡張として予定していたものであり、次年度以降に購入して研究の効率化と迅速化を図っていく。
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