研究課題/領域番号 |
18K06531
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
幸田 和久 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (40334388)
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研究分担者 |
藤原 清悦 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10440322)
井端 啓二 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (30462659)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 小脳 / 恐怖条件付け / 高次脳機能 |
研究実績の概要 |
近年、ヒトやサルの脳機能イメージング研究などから、小脳は非運動性の機能にも関与することが示されつつあるが、そのメカニズムについては不明な点が多い。我々はこれまでに、小脳におけるシナプス形成とシナプス可塑性に重要な機能を果たすCbln1-デルタ2グルタミン酸受容体(GluD2)シグナリングと運動学習の関連を明らかにしたが、その過程で、ヒトのGluD2遺伝子の欠失が運動失調に加え、言語や知能の障害を引き起こすことを見出し、また、小脳特異的Cbln1欠損マウスにおいても情動機能(恐怖条件付け)に異常が見られることを報告した。そこで、この成果をさらに推し進め、小脳が如何に脳高次機能を実現しているかを解明するために、まず、小脳における神経活動マーカーの探索を進めた。C57Bl6マウスにカイニン酸を腹腔内投与し痙攣を誘発させると、小脳ではc-fos、junB、Npas4などの最初期遺伝子の発現が有意に増加することが定量的real time PCRにおいて確認されたが、発現量の増加率は海馬に比べると1桁下回っていた。一方、前脳において神経活動性マーカーとしてよく用いられるArcには有意な変化が見られなかった。in situ hybridizationにより、最初期遺伝子発現の小脳内の分布を検討すると、特に、小葉IX、Xにおける発現上昇が顕著に増加していた。これらの結果から、小脳ニューロンの活動性マーカーとして、上記の最初期遺伝子を用いることが有望であると考えられる。恐怖条件付け、特に手掛かり依存性恐怖条件付けにおける小脳内の責任部位を同定するために、本行動実験のシステムを立ち上げ、現在解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小脳における最初期遺伝子の発現パターン、特にその発現の強さと時間経過のプロファイルが前脳とは異なっており、これらの至適条件の検討に時間を要している。また手掛かり依存性恐怖条件付けは、コンテクストに対する恐怖条件付けを排除する必要があるため、より繊細な動物の扱いが不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
恐怖条件付けにおける小脳の神経活動を早急に明らかにする。この評価のために、より簡便な免疫組織学的方法も併用することが、適切な抗体を見出したので可能となった。また行動によって活動が上昇するニューロンをマーキングするために、RAMシステムを用いたAAVウイルスベクターを作成して、光遺伝学的操作への準備とその有効性の確認のための基礎的実験を開始する。RAMシステムとは、c-fosのプロモーター下で関心遺伝子を発現させるもので、遺伝子発現の神経活動依存性を高めるために、Npas4の結合配列を付加した発現系である(Sorensen et al. eLIFE 2016)。
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