研究課題/領域番号 |
18K06533
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
中村 望 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (50450961)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 呼吸 / 認知 / 記憶 / 光遺伝学 / in vivoカルシウムイメージング / AAV接種 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、ヒト心理生理実験にて、呼吸活動が直接認知パフォーマンス(反応時間と正解率)を制御していることを示し、2018年国際科学誌PLoS ONEに発表した。この成果に基づいて本研究課題では、動物を用いて、呼吸活動が認知機能を制御するメカニズムの存在を細胞レベルで明らかにすることを目的とする。具体的には、1)呼吸計測下での恐怖記憶課題を用いて、認知プロセスと呼吸パターンの関係性を明らかにすること、2)光遺伝学を用いて、呼吸を制御する方法を確立すること、3)ファイバー顕微内視鏡を用いて、in vivo覚醒マウスの神経活動をリアルタイムイメージング法を確立することである。1)に関しては、覚醒マウスの行動実験から認知プロセス別に特異的な呼吸パターンが対応していることが示された。2)に関して、初年度の2018年度は、準備や条件設定に時間を費やした。特に、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)のマウスへの接種実験については、本学遺伝子組換え実験安全委員会から承認を得るまで2018年4月から半年以上かかった。それまでの間、一部の組換えAAVの作成を行った。また組換えAAVの接種は、脳固定装置を用いてin vivoマウスの脳局所へ微量(0.1ul-0.5ul)のAAV接種となり熟練した技術が必要であるため、その準備段階として、AAVを用いずに微量の色素による脳局所への接種実験を行った。3)に関しては、2018年度に、本学の実験室にファイバー顕微内視鏡を組み立てて設置を行った。今後、組換えAAVを用いて脳局所への接種実験を行い、まずは行動レベルで呼吸との関連性、次にカルシウムイメージングによる細胞レベルでの関連性について検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、1) 呼吸計測下での行動実験の精度の向上、2) 光遺伝学による呼吸制御の準備や条件設定、3) ファイバー顕微内視鏡によるin vivo覚醒マウスの神経活動のリアルタイムイメージングの条件設定を行い、順調に進展している。特に、1)の動物行動実験による認知プロセスと呼吸パターンについて、それぞれに対応する明確な関係性を示し、これまでの知見と同様な結果が得られている。この成果に関しては、今後の学術会議で発表する予定である。また2)の組換えAAV接種実験について、本学の遺伝子組換え実験安全委員会の承認や微量色素による脳局所への接種予備実験など、順調に準備が整いつつあり、2019年度から本格的にAAV接種実験に取り組む予定である。さらに、3)のファイバー顕微内視鏡についても同様、2019年度から本格的に実験に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究において、以下の通りである: 1)呼吸計測下での行動実験直後、脳を摘出しスライスを作成し、脳内の神経活動マーカーで染色するcatFISH法を実施する予定である。神経活動マーカーとして広く用いられている最初期遺伝子発現Fos、ArcなどをcatFISH法で可視化し、認知課題によるさまざまなプロセスに関連する脳局所の神経活動を同定する。 2)神経細胞に発現するChR2(H134R)遺伝子とeNpHR3.0遺伝子を含む組み換えAAVを脳局所へ接種し、LED光照射による動物行動の変化を観察し、光遺伝学による行動制御の効果を確認する。そして次に、Creマウスを用いた組換えAAV接種実験を行い、特異的な神経細胞に発現するChR2(H134R)遺伝子とeNpHR3.0遺伝子の光操作による行動制御の効果について確認していく。 3)ファイバー顕微内視鏡を使用するための蛍光強度、さらにはファイバー径のサイズや研磨方法等の条件設定を行っている予定である。in vivoマウスを用いたファイバー顕微内視鏡によるカルシウムイメージングを行いながら、ファイバーに隣接する電極からlocal field potentialを同時計測し、ファイバー顕微内視鏡によるカルシウムイメージングと神経活動の関係を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度へ新たに生じた使用額は17,600円であるため、ほぼ計画通り研究費が使用されていると考えている。この金額の使用計画として、研究に必要な消耗品等の購入を予定している。
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