血液脳関門を欠いた感覚性脳室周囲器官(sCVOs)は、体液のNa+濃度や浸透圧のセンサーをはじめ、体液成分のモニタリングに関わる分子が特異的に発現し、生命維持に不可欠である体液恒常性維持の根幹を担っていると考えられている。最近研究代表者らは、sCVOsのグリア細胞おいて発現するNaチャンネル分子Naxが、水分摂取行動制御を担うNa+濃度センサーであることを明らかにした。さらに飲水行動全体を説明するには、Naxばかりではなく未知のNa+濃度センサーからのシグナルも必要であることが新たに判明した。本研究は、この未知のNa+濃度センサー分子の実体を明らかにすることを目的としている。 2020年度は、Na+濃度センサー候補分子とNaxシグナルとの関係を調べるために、NaxノックアウトマウスにおけるNa+濃度センサー候補分子の発現抑制実験を行い、Na+濃度センサー候補分子からのシグナルは、Naxからのシグナルとは独立していることを明らかにした。さらに、Na+濃度センサー候補分子が、光刺激することで水分摂取を誘導できることが報告されているアンギオテンシンIa型受容体陽性の神経細胞に発現していることが判明した。
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