研究課題
昨年度まで、マーモセットの神経活動を約2-3ヶ月間継続的に観察することに成功している。しかし、異常タンパク質が神経細胞に取り込まれ近接する細胞に伝播し、さらにその神経細胞が変性し、表現型を示すまでの全過程を明らかにするには4-5ヶ月の継続的な観察が必要である。そこでさらに本年度では、マーモセットで顕著に見られる新生組織の除去方法を改善すること、さらに2光子顕微鏡観察の対象部位の新生組織除去後の固定方法を改良することにより4ヶ月程度継続的に観察することに成功した。また神経変性による大脳皮質体性感覚野における性状異常を示すためには、正常時での基本的な応答様式を明らかにする必要がある。そこで本年度はマーモセット体性感覚野における、それぞれの体部位に対する応答マップを明らかにし、 電気刺激と振動刺激といった刺激の違いによる応答変化を3個体で明らかにし、統計解析を行うことにより個体間での差異を明らかにした。また、その結果、マーモセットでは体性感覚応答マップに個体間でのばらつきは非常に小さく、さらに刺激の違いにおける応答は、体性感覚応答マップの差異というよりは、応答領域に変化はなく、応答する領域に存在する神経細胞の応答の違いにより生じていることが明らかになった。さらに、異常型α-Synの伝播過程とその影響を顕微鏡下で観察するために、赤蛍光ラベルした異常型α-Synを発現するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を開発した。
3: やや遅れている
本研究ではマーモセットの大脳皮質を対象に、神経変性タンパク質の伝播状況を観察するが、その観察のためには正常状態での体性感覚野の応答状況を明らかにする必要がある。そこで本年度においても引き続きその部分に対する基本的知識の整備につとめた。
本年度では異常型α-Synの伝播過程とその影響を顕微鏡下で観察するために、赤蛍光ラベルした異常型α-Synか、もしくは赤蛍光ラベルした異常型α-Synを発現 するアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を開発した。2020年度では伝播先の神経細胞に、神経活動に伴い緑蛍光を呈するGCaMP6をAAVにより発現させる。それにより、赤蛍光 により異常型α-Synの移動を観察し、異常型α-Synが伝播された神経細胞における影響を緑蛍光で観察することが可能になる。これらの実験を可能にするための ベクター開発および発現を実行する。
次年度使用額が生じた理由は、マーモセットの新規個体の購入ができなかったためである。マーモセットの飼育、売買を行っている株式会社CLEAのマーモセットの生産が滞っており、2019年度に購入することができなかったため、2020年度に使用額を繰り越す。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cells.
巻: 22 ページ: 275-289
10.3390/cells9020275.