研究課題
本研究の目的は、α-シヌクレインやTDP-43といった異常アミロイドタンパク質が神経細胞内で発生し、それが近隣の細胞へ伝播することにより脳の広範囲に広がっていくという、プリオン様の伝播過程を2光子顕微鏡により観察することを目的としている。従って、脳内におけるアミロイドタンパク質の神経細胞間の伝播状況を調べるためには、1)同一細胞を長期間、2光子顕微鏡により観察するための手技、2)神経細胞間の接続状況の同定、3)アミロイドタンパク質の伝播による神経細胞の機能異常の同定を確立する必要がある。そこで、1)同一細胞の長期観察のために、gore-tex社製の人工硬膜を、マーモセットの開頭手術後から使用することで、それまで一ヶ月しか観察できなかったものが、最長4ヶ月の観察に成功した。アミロイドタンパク質の伝播とそれによる影響を観察するには2-3ヶ月の継続的な観察が必要であるため、この成果は非常に大きい。2)2光子顕微鏡では組織表面から500μm程度の深部を観察することが可能なため、観察対象は黒質や視床といった脳深部の部位ではなく、大脳皮質など表面に存在する脳部位が対象になる。さらにアミロイドの伝播を観察するため、アミロイドを播種した細胞と結合がある細胞を観察する必要がある。また、次項でも触れるが、アミロイド伝播による機能的な影響も観察するために、観察が容易な感覚野を対象にする。そこで感覚野へ投射があると考えられる、運動野を対象にして、感覚野と運動野との接続を、HSV-1ベクターを用いて明らかにした。さらに3)アミロイドの伝播による機能への影響を見るために、大脳皮質体性感覚野の刺激への応答パターンを同定した。これにより、機能異常が見られた時の刺激応答パターンの変化を、正常時と異常時とで比較することが可能となった。以上、3つの成果により、アミロイドタンパク質の伝播を観察する基礎的な技術を確立することに成功した。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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