研究課題/領域番号 |
18K06539
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研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
小出 哲也 帝京科学大学, 総合教育センター, 准教授 (30247837)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 化学感覚 / 侵害受容 / 忌避行動 / 感覚ニューロン / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、ゼブラフィッシュ稚魚における侵害刺激(CO2)からの忌避行動をつかさどる神経回路の解明である。化学物質が誘起する生得的な誘引行動・忌避行動は、感覚刺激に応じて適切な行動を生み出す神経回路メカニズムを研究する上で強力なモデルといえる。そこで、CO2を受容する化学感覚系を用いて、感覚入力から行動出力に至る神経回路の全貌解明を目指してきた。これまでに、CO2を受容し、忌避行動を引き起こすのは第0番脳神経の終神経であることを突き止めている。終神経は、嗅神経と嗅球の間に位置し、脳の広範囲にその軸索を投射する、性腺刺激ホルモン放出ホルモン( Gonadotropin releasing hormone, GnRH)を発現するペプチドニューロンである。この終神経を介した侵害性の防御行動の神経回路メカニズムを明らかにするためには、終神経のトランスクリプトーム解析を行い、CO2受容体を同定することが必須である。 今年度は「先進ゲノム支援」の支援のもと、①終神経のRNAシークエンス、そして②GnRH陽性ニューロンのシングルセル解析を実施した。具体的には、GnRH3プロモーター下でGFP を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ 由来のGFP細胞集団を実験試料とした。①RNAシークエンスでは、終神経由来のGFP細胞集団のみをFACSで回収し、RNAシークエンスを行った。②シングルセル解析では、脳内に位置するGFP(GnRH)陽性細胞を対象として、終神経、間脳視床下部と三叉神経節の細胞タイプを確定する。GFP細胞集団のみをFACSで回収した後のシングルセル解析にはFluidigm C1 Systemを用いてシングルセルレベルでのRNAシークエンスを行った。現在、RNAシークエンスの結果を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「先進ゲノム支援」の支援のもと、GnRH3プロモーター下でGFP を発現するトランスジェニックゼブラフィッシュTg(GnRH3:Gal4FF;UAS:GFP) 由来のGFP細胞集団を実験試料としたRNAシークエンスが実施できたことにより順調に研究が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年行ったRNAシークエンス解析を最重要課題として取り組む。当初の予定通り、終神経に特異的なRNAの発現プロファイルをもとにして、遺伝子リストの上位からCO2受容体候補遺伝子のcDNAプローブを作成し、終神経に発現していることを確認する。同定したCO2受容体候補遺伝子をHEK293細胞に発現させた in vitro での発現系によりその機能を確認した上で、CO2受容体遺伝子が全ての終神経に発現しているのか、特定の細胞集団なのかを明らかにする。さらに、ゲノム編集技術CRISPR/Cas9法を用いてCO2受容体欠損変異体の作成、さらには、CO2受容体およびGnRH受容体のゲノム領域にGal4を挿入したトランスジェニックフィッシュを作成を目指す。
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