研究実績の概要 |
アルコール認識を介したC(sp3)-Hシアノ化反応の開発に取り組んだ。具体的にはトリフルオロメチルケトン部位、ホウ素部位、水素結合部位などを備えた水素移動(HAT)触媒を設計・合成し、原著論文の形で報告している(Chem. Eur. J. 2018, 24, 8051、Chem. Commun., 2018, 54, 3215)条件に基づき、条件最適化を行なった。 リン酸触媒の場合は残念ながら、アルコールと相互作用することでHAT触媒活性が大きく減弱することが明らかとなった。このため、活用を断念した。 スルホンアミド触媒の場合は、トリフルオロメチルケトンの結合位置を適切に選ぶことでシクロヘキセンに対するHAT触媒活性が保たれることを確認した。しかしながら想定したアルコール認識を介する位置選択性発現を見いだすことは現在までに出来ていない。 アルコール認識部位としてのホウ素を用いた検討を行なう過程で、ヒドロキシル基α位での反応が確認された。計算化学による解析の結果、ボレート形成によってアルコールα位C-H結合エネルギーの弱化が生じ、これが反応促進に寄与しているとの洞察を得ることが出来た。この発見をもとに、アルコールα位C-H官能基化反応を促進させるボリン酸-HATハイブリッド触媒系の同定に至った。現在は化学選択性の向上を目指した検討を続けている。
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