最終年度は、鍵となる四環性中間体の量的供給と、標的化合物の全合成を達成した。すなわち、まず、ジエン部位がSi-O結合を介して繋がったベンザイン前駆体を合成した後、ベンザインとジエン部位との間の分子内Diels-Alder反応によって対応する環化付加体を得た。続いて、得られた生成物を対応するトリフラートへと変換した後、ヨウ化マグネシウムを作用させたところ、アルキル架橋基選択的な転位反応に続いて橋頭位のヨウ素化が進行した。さらに、このヨージドから発生させたリチオ体をアセトアルデヒドに付加させた後、3工程の変換により十分量の鍵中間体を合成した。その後、カルバゾール環の構築を含む数工程の変換を経、ツビンゲンシンBの全合成を達成した。 本研究を通じて開発した合成手法によってビシクロ骨格上の置換基改変に基づく柔軟な構造展開が可能になり、将来的には、より詳細な構造活性相関研究を通じた優れた生物活性を有する新規有用物質の創製につながるものと期待される。
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