研究課題
肥満は環境因子と遺伝的因子が関わる疾患であり、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。近年抗肥満因子であるレプチンが効きにくくなること、即ちレプチン抵抗性が肥満の主要な要因として問題視されている。申請者は、ホモシステインが異常タンパク質蓄積によって生じる小胞体ストレスを誘導し、レプチン抵抗性(肥満)の原因となることを示してきた。興味深いことに、ホモシステインは活性化メチル化サイクルによってアデノシンと共に生じ、DNAのエピジェネティックな制御にも関わる。そこで、本研究ではホモシステインやアデノシンによる、レプチン抵抗性(肥満)発症への関りを検討した。レプチン受容体を恒常的に発現させた神経細胞株を用いた検討の結果、アデノシン処置によりレプチンによるSTAT3のリン酸化が抑制され、アデノシンはレプチン抵抗性の形成に関わる可能性が確認された。そこでアデノシンによるレプチン抵抗性形成の分子機構を明らかにするためアデノシンと結合する分子の同定を試みた。アデノシンと磁気性ビーズを結合させたアデノシンビーズを作成し、結合候補因子を抽出して銀染色で解析した結果、いくつかの陽性バンドが認められ、結合候補因子の存在が明らかになった。そこで本因子をnano LC-Ms/Ms解析して同定と解析を試みた。その結果、nano LC-Ms/Ms解析で同定された候補因子の特異的抗体を用いた解析においても再現性が取れることが明らかになった。現在、競合阻害実験等で、アデノシンと本因子の結合特異性を検討している。今後は、本因子のsiRNAを用いた特異的ノックダウン法等を用いて、本因子がノックダウンされた時のレプチンシグナルに及ぼす影響を解析する予定である。このような解析により、アデノシンによるレプチン抵抗性形成機構の分子機序解明を目指す予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初、予定していた計画と予想通りの結果が得られたため、順調に進んだと考えられる。
アデノシンと結合する候補因子が同定できたことより、アデノシンによるレプチン抵抗性形成機構解明の手がかりが一つ得られたと考えられる。本検討結果をもとに、さらに解析を進め、アデノシン・ホモシステインによるレプチン抵抗性形成機構の解明を進める予定である。
試薬等の購入時期が若干ずれたため次年度使用額が生じた。研究計画に大きな変更や遅れもなく、次年度も引き続き、計画通り研究を実施する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (5件)
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