肥満は、脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病の発症にもつながることから、その発症機構を明らかにすることは、予防医学の観点からも重要な課題と考えられる。肥満の発症は遺伝的要因と環境要因が関わると考えられているが、その詳細なメカニズムについては明らかにされていない。レプチンは、1994年にロックフェラー大学のフリードマン博士らの研究により明らかにされた抗肥満因子である。肥満者においてはレプチンが効きにくい状態、すなわちレプチン抵抗性の状態であることが報告されている。しかし、レプチン抵抗性の形成機構については不明な点が多く残されている。ホモシステインは活性化メチル化サイクルによって生じ、DNAのエピジェネティックな制御に関わる。本研究では、ホモシステインとその代謝アミノ酸が神経細胞におけるレプチン抵抗性の形成に関わる可能性を検討した。検討の結果、ホモシステインは神経細胞において、レプチンの下流のシグナルであるSTAT3のリン酸化を抑制することが明らかになった。一方で、ホモシステイン代謝によって生じるメチオニン処理によってはレプチンによるSTAT3のリン酸化の抑制はほとんど起きなかった。ホモシステイン代謝によって生じるシステイン処理によってはレプチンによるSTAT3のリン酸化の抑制は若干見られたが、ホモシステイン処理による抑制に比べて弱いものであった。従って、ホモシステインは他のアミノ酸とは異なり、恐らく特異的にDNAのメチル化にも影響し、脳の神経細胞におけるレプチン抵抗性の形成に関わる可能性が示唆された。
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