研究課題/領域番号 |
18K06551
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
久松 洋介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (80587270)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工レセプター / ヘム / 超分子 / 蛍光 / 自己集合 |
研究実績の概要 |
ヘムは生命活動に必須な補因子であるだけでなく、シグナル分子としても重要な役割を担っていることが明らかとなってきた。しかし、細胞内でのヘムの挙動について、いまだに十分には理解されていない。このような背景から、ヘムを認識し検出できるツールの開発が望まれている。 本研究では、超分子化学的アプローチにより水溶液中でヘムの認識と検出を実現する人工レセプターの創製に取り組んでいる。これまでに、ヘム認識部位として二つのアーム部分に4-アミノキノリン構造を有するピンセット型分子が、DMSO/HEPES 緩衝液 (pH 7.4) = 2:3 (v/v) 中ではあるものの、非共有結合性相互作用によってヘムと安定な複合体を形成することを明らかにした。 本年度は、ヘム認識能を有するピンセット型分子に蛍光色素として sulfoCy5 を導入した新たな蛍光性人工レセプターの設計、合成および機能評価を行った。蛍光性人工レセプターは、20 mM HEPES 緩衝液 (pH 7.4) (0.10 M NaCl および 1% DMSOを含む)中でヘムと複合体を形成し蛍光強度が顕著に減少した。4-アミノキノリン部位を一つだけ有する人工レセプターも合成しヘムに対する蛍光応答を評価した結果、ピンセット型構造を有する蛍光性人工レセプターの方がヘムに対して優れた蛍光応答を示した。 さらに、動的光散乱法による測定および透過型電子顕微鏡観察を行った結果、蛍光性人工レセプターとヘムの複合体は水溶液中で自己集合し、数百ナノメートル程度の凝集体を生成することを発見した。現在、蛍光性人工レセプターのヘム認識による自己集合挙動と蛍光応答についてより詳細な検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘム認識能を有するピンセット型分子に蛍光色素を導入した新たな蛍光性人工レセプターを設計、合成した。蛍光性人工レセプターは、20 mM HEPES 緩衝液 (pH 7.4) (0.10 M NaCl および 1% DMSOを含む)中でヘムと複合体を形成し、それを蛍光強度変化として検出できることを明らかにした。さらに、人工レセプターが、ヘムとの複合体形成を鍵とする自己集合挙動を示すことを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の達成を目指し、ヘムに対して高選択的な蛍光応答を示す人工レセプターの開発に取り組む。本年度開発した蛍光性人工レセプターのヘム選択性を詳細に検討し、得られた知見をもとにヘム選択性の向上を目的とした蛍光性人工レセプターの構造最適化を行う。また、本年度見出した人工レセプターの自己集合挙動を利用したヘムの蛍光検出システムについてもあわせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた消耗品のうち、本年度中に購入する必要がなくなったものがあるため、次年度に繰り越した。
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