研究実績の概要 |
課題申請の際に以下の計画を立案した。初めにL体のイミノフラノースの立体異性体を合成し、それらのα-グルコシダーゼ阻害作用に対する構造活性相関を調査する。その後、D体のイミノ糖の研究として、D-イミノフラノースに種々のC1位側鎖を導入し、それらの側鎖が酵素阻害活性に与える影響を解明する。 上記の研究計画に従い、L体の1-n-ブチル-イミノフラノースの複数の立体異性体の合成に着手した。1-n-ブチル-L-イミノフラノースは、C1-C3位に不斉中心をもつため、8種の立体異性体が存在する。私は、その内の7種の合成を達成し、その酵素阻害活性の測定を行った結果、アラビノース型のみが極めて高い活性を示し、それ以外の6種の立体異性体では大幅に活性が低下することを明らかとした。この研究結果を「Catalytic asymmetric synthesis of stereoisomers of 1-C-n-butyl-LABs for the SAR study of α-glucosidase inhibition」Tetrahedron, 2019, 75, 2866-2876.として発表した。本研究に対して多くの研究者が興味をもったためGraphical abstractがIssue 20の表紙に採用された。 上記の研究結果より、イミノ糖では、予想よりも立体異性体によって酵素阻害活性が大幅に変化することが明らかとなった。そのため、D体のイミノ糖誘導体の合成に先立ち、イミノ糖だけでなくチオ糖や天然物の合成にも適用可能な複素環構築法の開発を行っている。本反応は、エピセレニウムイオンを経る分子内環化反応であり、これまでに2,3,6位に置換基をもつピペリジン誘導体の構築に成功している。現在、環化生成物から天然物のアルカロイド合成を検討している。なお、これまでにこの研究結果を2回学会で発表した。
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