研究課題/領域番号 |
18K06555
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大城 太一 北里大学, 薬学部, 講師 (30458765)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 微生物資源 / 脂質代謝 / 脂肪肝 / 脂肪肝炎 |
研究実績の概要 |
肝臓で中性脂質(コレステリルエステル(CE)とトリグリセリド(TG))が異常蓄積した脂肪肝状態は、炎症と線維化を惹起し、脂肪肝炎へと進展することから、その予防・治療法が求められている。本研究では、1)微生物資源を対象に、脂肪滴の生成を阻害する機能分子だけでなく、細胞内に中性脂質CEとTGを脂肪滴として蓄積させ、形成した脂肪滴を除去する(分解する)機能分子を探索すること、2)既に申請者の研究グループが発見したSOAT2選択的阻害剤ピリピロペン(PRD誘導体)や中性脂質分解促進剤ダイナピノン(DPA)などの脂肪肝炎発症モデルにおいての有効性を検証すること、3)項目1)で発見した新しい微生物由来の細胞内脂肪滴生成阻害機能分子もしくは除去(分解)機能分子の構造やその標的分子を解明することを目的として進めている。 まず、1)脂肪滴生成阻害分子の探索については、我々の研究室で供給される約2,000 サンプルの微生物培養液サンプルを中心に評価した結果、真菌の培養液から新規化合物2種3成分を発見した。また、脂肪滴除去(分解)機能分子の探索については、約1500サンプルの評価が終了し、13株の精製候補株を見出した。 つぎに、2)動物実験に関する研究については、SOAT2選択的阻害剤ピリピロペンA誘導体に焦点をあて、脂肪肝炎(NASH)に対する影響を評価した。 最後に、3)標的分子の解明に関する研究については、項目1)で発見した3成分はいずれも細胞内のCEを選択的に阻害し、その標的分子はCEの最終生成酵素であるSOATであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微生物資源を対象に細胞レベルで脂肪滴生成阻害分子もしくは脂肪滴除去(分解)機能分子をスクリーニングした結果、細胞内のCE生成を特異的に阻害する2種の機能分子を発見した。そのうちの1成分は、非常に高いSOAT2選択的阻害活性を示した。ピリピロペンA誘導体の動物実験に関しては、脂肪肝/脂肪肝炎発症モデルマウスに対する投与が終わり、現在、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、本研究では、微生物資源から、動物細胞内の脂肪滴 (CE やTG で構成されている) を観察する細胞評価系を用いて、脂肪滴の生成を阻害する機能分子や脂肪滴を除去する機能分子を探索する。また、脂肪肝や脂肪肝炎の標的分子として期待されるSOAT2を制御する機能分子(ピリピロペン誘導体)については、疾患モデル動物を用いて、脂肪肝や脂肪肝炎に対する薬理効果を解析することで、標的分子としての有用性を証明する。さらに、細胞内の中性脂質の生成を阻害するのではなく、分解を促進するという脂肪肝や脂肪肝炎では理想的な表現型を示すダイナピノンについては、量的確保を行い、疾患モデル動物を用いた薬理学的検討を進める。 1) 微生物資源からの機能分子の探索研究:スクリーニングサンプルは、申請者の研究グループが分離、培養した微生物資源ライブラリーを用いる(年間、2,000から3,000サンプルが供給される)。 2)モデル動物を用いた薬理試験:ピリピロペン誘導体の動物実験の解析をまとめ、SOAT2阻害が脂肪肝や脂肪肝炎の創薬標的として有効であることを証明する。また、中性脂質分解促進剤DPAについても、同様に疾患モデル動物で評価することで、脂肪肝や脂肪肝炎の治療薬としての可能性を証明する。 3)作用メカニズムの解析:項目1)で得られた新規機能分子について、細胞内での脂質の網羅的なリピッドミクス解析と機能分子の各種標識体を利用した結合タンパク質分子の解析という両面から作用メカニズム解析を進める。最終的に、作用メカニズムを明らかにし、その標的分子を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度の実験計画の1つであるピリピロペン誘導体の動物実験を行ない、現在、摘出した臓器や血漿の解析を進めている。肝臓や小腸での遺伝子発現プロファイルを解析する遺伝子の選定を現在進めているため、2019年度に一部繰り越した。
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