研究実績の概要 |
本研究課題は大きく2つある。第一に、活性型ビタミンD3誘導体として我々が見出した優れた骨形成作用を有するAH-1(2013年発表)および強力な制がん作用を有するMART-10(2003年発表)に対し、ビタミンD3特異的な不活性化酵素CYP24A1に対する代謝抵抗性の増強を獲得し、生物学的半減期を増長してそれぞれの薬理活性を強化する。これにはCYP24A1酵素による水酸化反応点にフッ素原子を導入する。第二に、ビタミンD3不活性化酵素CYP24A1の選択的阻害剤を設計・合成し、体内の活性型ビタミンD3やビタミンD医薬品の生物学的半減期を延長することにより、生理活性・薬理活性を間接的に強化する。第一の目的に対し、ビタミンD3側鎖26位、24位、23位に段階的にフッ素原子を導入し、酸化的な代謝不活性化を防止することとし、昨年度には26位ヘキサフルオロ化の簡便な改良合成法と23位フッ素化の前駆体となる立体選択的23位水酸化法を開発し、それぞれ論文発表した。 F. Kawagoe, T. Sugiyama, M. Uesugi, A. Kittaka. Recent developments for introducing a hexafluoroisopropanol unit into the Vitamin D side chain. J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 2018, 177, 250-254. F. Kawagoe, T. Sugiyama, K. Yasuda, M. Uesugi, T. Sakaki, A. Kittaka. Concise synthesis of 23-hydroxylated vitamin D3 metabolites. J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 2019, 186, 161-168. 第二の課題についてはAH-1の更なる誘導化を検討し、19-ノル型のAH-1を合成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度には、昨年度開発した上記23位水酸化体からフッ素原子導入に成功し、その結果、フッ素原子が導入された23位の立体化学によって、ヒトCYP24A1に対する代謝速度が異なることを見出し、論文発表した。また、24位ジフルオロ化の簡便な改良合成法を開発し、論文発表した。 F. Kawagoe, K. Yasuda, S. Mototani, T. Sugiyama, M. Uesugi, T. Sakaki, A. Kittaka. Synthesis and CYP24A1-dependent metabolism of 23-fluorinated vitamin D3 analogues. ACS Omega 2019, 4(6), 11332-11337. F. Kawagoe, S. Mototani, K. Yasuda, K. Nagasawa, M. Uesugi, T. Sakaki, A. Kittaka. Introduction of fluorine atoms to vitamin D3 side-chain and synthesis of 24,24-difluoro-25-hydroxyvitamin D3. J. Steroid Biochem. Mol. Biol. 2019, 195(12), #105477. 以上のように、昨年度に引き続きビタミンD3側鎖26位、24位、23位への段階的なフッ素原子の導入は順調に進んでいる。 一方、第二の課題であるヒトCYP24A1選択的阻害剤開発は、ヘム鉄に配位可能なアゾール類を含有するビタミンD誘導体を種々合成中であり、もともと企業研究者らと共にA環2位にアゾール基を含有するAH-1や19-norAH-1を開発・取得してきた我々研究グループの強みである。
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