研究課題/領域番号 |
18K06556
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
橘高 敦史 帝京大学, 薬学部, 教授 (00214833)
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研究分担者 |
高野 真史 帝京大学, 薬学部, 講師 (50386611)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ビタミンD / ビタミンD受容体 / ビタミンD誘導体合成 / フッ素化 / 代謝抵抗性 / CYP24A1 / 骨形成作用 / 制がん作用 |
研究実績の概要 |
本研究課題では第一に、優れた骨形成作用および制がん作用を有する新規活性型ビタミンD3誘導体をビタミンD3の特異的な不活性化酵素CYP24A1に対する代謝抵抗性獲得の観点からそれぞれ見出すことを目的とする。すなわち、我々が見出した高カルシウム血症に陥らない、骨形成作用の強いAH-1と制がん作用の強いMART-10のCYP24A1酸化反応点に段階的にフッ素原子を導入し、酸化的代謝を防止する。第二に、CYP24A1選択的阻害剤を設計・合成する。CYP24A1選択的阻害剤は、体内の活性型ビタミンD3やビタミンD医薬品の生物学的半減期を延長すると考えられる。CYP24A1のX線結晶構造解析に基づき、酸素の還元的活性化を阻止する選択的CYP24A1阻害剤を取得する。 2022年度には、2018-2020年度に効率的合成法を確立した(23R)-および(23S)-23-fluoro-25(OH)D3に続き、23,23-difluoro-25(OH)D3とその24位水酸化体の合成に成功し、天然体である25-水酸化ビタミンD3(25(OH)D3)や2021年度に合成法を確立した(24R)-および(24S)-24-fluoro-25(OH)D3および24,24-difluoro-25(OH)D3とVDR結合親和性およびヒトCYP24A1代謝抵抗性を比較して論文発表した。24位ジフルオロ化は代謝抵抗性とVDR結合親和性が同時に天然体を凌駕するのに対し、23位ジフルオロ体は代謝抵抗性は8倍に高まるものの、VDR結合親和性は8.2%にまで低下した。 また、AH-1が変異VDR(R270L)ラット(ヒトのVDR変異家系VDR(R274L)に対応)の骨軟化症状に対して治療効果があることをin vivoで確証し、論文発表した。 また、23-fluoro-25(OH)D3の合成中間体である23,25(OH)2D3を利用し、ヒトで過剰な25(OH)D3は、尿中では主に23,25(OH)2D3として排泄されることを共同研究により明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに26(27)位ヘキサフルオロ化体の簡便な改良合成法を確立し論文発表し、続いて23位モノフッ素化の立体選択的合成法の確立に成功し論文発表した。(23S)体が(23R)体の4倍のCYP24A1代謝抵抗性を有することを明らかにした。続いて24位ジフルオロ化の改良合成法を開発し論文発表した。2021年度には24位モノフッ素化の立体選択的合成法の確立に成功して論文発表した。(24R)体が(24S)体の3倍のCYP24A1代謝抵抗性を有することを明らかにした。2022年度には、23位ジフルオロ化体の合成法を確立し、論文発表した。代謝抵抗性は天然体の8倍あるもののヒトVDR結合親和性は8.2%しか示さないという興味深い結果を得た。このように第一の研究課題に対し順調に成果を収め、原著論文6報および側鎖フッ素化ビタミンD誘導体を脂質生合成抑制効果に応用した論文を1報、また、ビタミンD側鎖フッ素化に関する総説を1報と一般向け日本語概説を2報発表した。第二の研究課題に対し、CYP105A1に対する阻害活性評価に成功した(未発表)。合成法については確立し、側鎖フッ素化MART-10誘導体合成に適用して複数のフッ素化体を合成し、顕著な乾癬治療効果(動物実験)とすい臓がん細胞増殖抑制活性(in vitro)を見出し、これらの成果をもとに特許基礎出願に続き、優先権出願した。また、ビタミンDのD環修飾アナログについて、総説を1報発表した。
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今後の研究の推進方策 |
新たな側鎖フッ素化ポジションとして、新規に22位のジフルオロ化およびモノフルオロ化を検討し、合成がほぼ終了したので、CYP24A1代謝抵抗性とVDR結合親和性および転写活性を評価する。また、新規に26(27)位のモノフルオロメチル化とジフルオロメチル化を検討し、合成がほぼ終了したので、CYP24A1代謝抵抗性とVDR結合親和性および転写活性を評価する。これまでに調べてきた骨形成活性や制がん作用を中心とした生物活性に対する影響を調べる。ビタミンD受容体との結合時に、26(27)位のヘキサフルオロメチル化と対照的な水素結合様式が可能となる。 第二の研究課題に対し、難易度の高いCYP24A1単離を検討しつつも、前段階としてビタミンDに対して同様の水酸化機能を有するCYP105A1の単離に成功し、アゾール系ビタミンD誘導体の阻害活性を認めることができたので、今後の代謝阻害剤設計の研究がしやすくなった。活性スクリーニングデータの取得と、X線共結晶構造解析についても今後進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議(Vitamin D Workshop)の開催日程が国内業務と重なり、海外出張を取り消した。翌年の国際会議への参加・発表を検討する。また、研究消耗品として使用する計画である。
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