研究実績の概要 |
我々は、骨形成作用の強いAH-1と制がん作用の強いMART-10を見出している。これらは活性型ビタミンD3誘導体でありながら憂慮すべき副作用である高カルシウム血症に陥らない化合物である。本研究課題では、ビタミンD3の特異的な不活性化酵素CYP24A1に対する代謝抵抗性獲得の観点から、当該酵素の反応点である側鎖部分にフッ素原子を順次導入し、側鎖22位から末端26,27位に導入したフッ素原子の数および立体化学がCYP24A1代謝抵抗性にどのような影響を与え、一方、リガンドとして活性発現に重要な特異的核内受容体(VDR)への結合親和性にどのような影響を与えるか調べた。2018年度から開始した本研究課題では、2020年度までに26,27位ヘキサフルオロ体と(23R)-および(23S)-23-fluoro-25(OH)D3の効率的合成法を確立し、論文発表した。2021年度には(24R)-および(24S)-24-fluoro-25(OH)D3および24,24-difluoro-25(OH)D3の効率的合成法を確立し、2022年度には23,23-difluoro-25(OH)D3とその24位水酸化体の合成に成功し、天然体である25-水酸化ビタミンD3(25(OH)D3)とVDR結合親和性およびヒトCYP24A1代謝抵抗性を比較して論文発表した。24位ジフルオロ化は代謝抵抗性とVDR結合親和性が同時に天然体を凌駕するのに対し、23位ジフルオロ体は代謝抵抗性は8倍に高まるものの、VDR結合親和性は8.2%にまで低下した。最終2023年度には(22R)-および(22S)-22-fluoro-25(OH)D3および22,22-difluoro-25(OH)D3の効率的合成法を確立した。 また、本研究課題期間中にAH-1が変異VDR(R270L)ラット(ヒトのVDR変異家系VDR(R274L)に対応)の骨軟化症状に対して骨質改善の治療効果があることをin vivoで確証し、論文発表した。 また、過剰な25(OH)D3は、尿中では主に23,25(OH)2D3として排泄されることを共同研究により明らかにした。 第二に、現在のところ活性は弱いが、CYP24A1選択的阻害剤の取得ができた。
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