研究課題/領域番号 |
18K06557
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
杉山 亨 帝京大学, 薬学部, 准教授 (40242036)
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研究分担者 |
出水 庸介 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 部長 (90389180)
森谷 俊介 帝京大学, 薬学部, 助教 (60717544)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチド核酸 / ゲノム / 有機化学 / 核酸医薬 / アンチジーン |
研究実績の概要 |
PNAはDNA結合能力が極めて高く、二本鎖DNAに侵入して相補的な配列とワトソン・クリック型塩基対で結合する「ストランドインベージョン」というユニークな結合様式が可能である。しかし、現時点では標的配列が制限されているためその用途は限られている。擬似相補的A-T塩基対をもつ擬似相補的PNA(pcPNA)の開発によってdouble-duplex invasionが可能となり、配列制限は大幅に緩和されたが、G-C塩基対を多く含む二本鎖DNAへの結合は現在もなお困難である。 本研究では、ストランドインベージョンにおける配列制限の克服を目的に、擬似相補的G-C塩基対をもつpcPNAの開発を目指す。分子設計においては、天然塩基(G、C)と人工塩基との間の水素結合は3本のまま維持し、両人工塩基に正電荷を導入することで人工塩基間の塩基対形成を静電的反発によって抑制することを計画した。 正電荷をもったGアナログであるpreQ1を塩基部位(Q塩基)とするPNAオリゴマーを合成し、DNAと非常に安定な二本鎖を形成することが示され、これを論文で報告した(Bioorg. Med. Chem. Lett., 39, 127850 (2021))。さらに、本年度は正電荷をもつCアナログの合成も完了した。2021年度はこれを組み込んだPNAオリゴマーを合成し、DNAとのヘテロ二本鎖およびQを組み込んだPNAオリゴマーとの二本鎖の安定性を評価する予定である。 一方、QをもつPNAオリゴマーのDNA結合が想定以上に良好だったので、当初の計画にはなかったが、このPNAオリゴマー単独によるストランドインベージョンの可能性も検討することにした。2020年度はQモノマーを大量合成し、Qを複数含むPNAオリゴマーの合成を進めた。2021年度にはストランドインベージョンの検討ができる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではDNAとの結合安定性は維持しつつ、PNAどうしの結合のみを抑制することを目的に研究を進めている。2020年度は当研究室で開発した新規PNAモノマー(Qモノマー)を組み込んだPNAオリゴマーのDNA結合が飛躍的に向上したことから1本のPNA単独によるduplex invasionの検討も始めた。また、Qと対になるCアナログの合成も完了した。Cアナログの合成は困難であったが、2020年度内に合成を達成でき当初の目的に向かって順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
正電荷をもつグアニンアナログ(Q塩基)と対をなす人工塩基として、正電荷を帯びたシトシンアナログの合成が完了したので、2021年度はこれを組み込んだPNAオリゴマーを合成する。DNAとのPNA―DNAヘテロ二本鎖およびQを組み込んだPNAオリゴマーとのPNA―PNA二本鎖の安定性を調べ、擬似相補的G-C塩基対になり得るか評価する予定である。さらに、QをもつPNAオリゴマーのDNA結合が想定以上に良好だったので、当初の計画にはなかったが、このPNAオリゴマー単独によるストランドインベージョンの可能性についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究で使用する市販のPNAモノマーは高額なため予算の多くを占めている。2019年度は別の予算でPNAモノマーを十分量購入できたためその分の予算を2020年度に繰越した。次年度使用額が生じたのは、この繰越しの一部が残額として残ったためである。 次年度はCアナログをもつPNAオリゴマーの合成を行なう予定であるが、モノマーの大量合成も合わせて行う予定である。Qオリゴマーの合成も引き続き行ない、擬似相補的G-C塩基対の性能評価を行う予定である。PNAオリゴマーの合成には市販のPNAモノマーも合わせて使用する。結合評価には大量のDNAオリゴマーが必要であり、繰越分は当初の計画通り合成原料とカスタムDNAの購入に使用する予定である。
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