研究課題/領域番号 |
18K06560
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
廣谷 功 武蔵野大学, 薬学部, 教授 (70192721)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | インダゾール / 不斉配位子 / ベンザイン / クロスカップリング |
研究実績の概要 |
インダゾール環は,生物活性化合物の基本骨格として認識され始めているが,機能性物質開発への応用例の報告は少ない.そこで,インダゾールの1位に不斉炭素を有する置換基を,3位にオルト位に金属に配位することが可能な置換基を有するベンゼン環を導入した化合物の合成方法を確立し,効率的な不斉配位子として用いることを企画した. まず,C3-C3aとC7a-N1結合を同時に形成してインダゾール環を構築するベンザインを経由する手法に着目し,ベンザインと2-bromobenzaldehydeとN-tosylhydrazineから合成したヒドラゾンを反応させることにより,付加環化反応とトシル基の脱離反応を伴う芳香化が一挙に進行し,3-(2-bromophenyl)indazoleを良好な収率で合成することができた.続いて,CuIを触媒とするdiphenylphosphine oxideとのクロスカップリング反応を行い,ジフェニルホスフィンオキシド単位を導入することに成功した. 最終目的化合物は1位に不斉炭素を有する置換基を有する化合物であるが,デザインした化合物が,実際に配位子として機能するかは未だに確認できていなかった.そこで,配位子としての機能を検証することを目的として,1位にベンジル基を導入,ホスフィンオキシドの還元を行い,1-benzyl-3-(2-diphenylphosphinophenyl)indazoleを合成し,マロン酸ジエチルのシンナミル化反応を行った.検討の結果,配位子を加えない反応や配位子としてtriphenylphosphineを加えた場合よりも合成したインダゾール誘導体を添加した反応の方が速度と生成物の収率が大幅に上回っており,反応を加速する配位子として十分に機能することを明らかにできた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
必要な官能基を有するインダゾール環を一挙に構築する反応条件を確立できたこと,インダゾールのC3位に結合している芳香環のオルト位にジフェニルホスフィノ基をもつ化合物を合成する方法を確立できたことは,本研究を実践する上では大きな成果であると考えている.また,合成に成功したモデル化合物ではパラジウム触媒のアリル化反応を大幅に加速することが明らかになったことから,デザインした化合物を配位子として機能させることが期待できる予備的な知見を得ることができたと考えている. 現在,不斉配位子として機能させるためには必須である不斉炭素を有する置換基の導入の検討を行なっているが,1位の窒素原子へのアルキル化が予想以上に困難であり,収率の改善とラセミ化しない反応条件の検討が必須である.2020年度はアルキル化の反応条件の改良と共に精査していく予定であるが,昨年度末から新型コロナウィルス感染拡大防止のため,学部学生・教員共に大学への入構が禁止されており,研究活動が完全に停止している状況である.一刻も早く事態が収集することを願っている.
|
今後の研究の推進方策 |
現在までの進捗状況にも記載したように,基本骨格の簡易合成とC3位に結合している芳香環の官能基化に成功していること,モデル化合物を用いた検討結果から,目的とした化合物は配位子として機能することが期待できる.本研究の目的は,インダゾール環を有する化合物を触媒的な不斉反応に用いることなので,今後はN1位への不斉炭素を有する置換基の効率的導入法の開発が解決すべき問題となる.本研究を企画した時点では,1位に導入する不斉炭素を有する置換基の最適化を簡便に行える様に,不斉源の導入はインダゾール環を構築後に行うことを考えていた.しかし,導入の際の光学純度の低下を避けることができないならば,不斉炭素を有するヒドラゾンを合成後にベンザインとカップリングさせて,最初から不斉炭素を有しているインダゾールを合成する経路も検討する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大防止のために年度末の大学入構禁止に伴い,物品の発注に制限が生じてしまった.残額は来年度に使用する予定の試薬費として使用する予定である.
|