インダゾール環を機能性物質開発への応用例は少ない.そこで,インダゾールの1位に不斉炭素を有する置換基を,3位にオルト位に金属に配位することが可能な置換基を有するベンゼン環を導入した化合物の合成方法を確立し,効率的な不斉配位子として用いることを企画した. ベンザインを経由してC3-C3aとC7a-N1結合を同時に形成してインダゾール環を構築する手法に着目し,2-bromobenzaldehydeとN-tosylhydrazineから合成したヒドラゾンを反応させたところ,3-(2-bromophenyl)indazoleが良好な収率で得られた.本反応では,付加環化反応とトシル基の脱離反応を伴う芳香化が一挙に進行したものと考えている.続いて,CuIを触媒とするdiphenylphosphine oxideとのクロスカップリング反応を行い,ジフェニルホスフィンオキシド単位を導入することに成功した. 目的とした化合物の配位子としての機能を検証することを確かめるために,1位にベンジル基を導入した1-benzyl-3-(2-diphenylphosphinophenyl)indazoleを合成し,マロン酸ジエチルのシンナミル化反応を行った.検討の結果,配位子を加えない反応や配位子としtriphenylphosphineを加えた場合よりも合成したインダゾール誘導体を添加した反応が速度と生成物の収率が大幅に上回っており,反応を加速する配位子として十分に機能することを明らかにできた. 次に,1位に不斉炭素を有するフェニルエチル単位を導入した化合物の合成を検討した.しかし,合成の際に相当量のラセミ化が進行する事が判明し,本化合物の利用は断念した.そこで,窒素原子が結合する炭素原子はメチレンとして,β位炭素が不斉炭素である化合物をデザインした.本化合物の機能に関してはこれからの検討課題である.
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