研究実績の概要 |
申請者が発見したメトキシ-p-キノンに対する光照射による新規化学変換反応に着目し、本反応の基質一般性、至適反応条件の選定、及び反応機構の解明に向けた化学的研究を展開しました。次にこの独創性の高い反応を用いて、抗腫瘍活性イソキノリンキノン天然物の化学変換と付随する様々な誘導体の合成、並びに構造活性相関研究を経て、生物活性発現に必要な情報提供に繋げました。さらに、カリブ海沿岸に生息する群体ホヤの極微量二次代謝産物として見出され、悪性軟部腫瘍に対して有効な新規医薬品として上市されたトラベクテジン(商品名:ヨンデリス)の恒久的供給手段として開発された全合成経路の鍵中間体に本光反応を適用する革新的な改良経路を提案し、実践しました。なお、本研究の展開過程で得られた多種多様な合成品について、ヒトがん細胞株(HCT116, DU145)に対する殺細胞活性を指標とする生物活性評価と構造活性相関解析を経て、新規制がん剤の開発候補化合物を選出しました。以下に主な研究成果をまとめました。 1)三環系メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリンキノンの光反応の至適反応条件の探究と基質一般性を含む反応限界の提示:国内学会発表(3件)、海外学会発表(2件)、学術論文掲載(1件);2)改良ピクテット・スペングラー反応の開発と1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン抗腫瘍活性抗生物質サフラマイシンAの全合成:国内学会発表(1件)、学術論文掲載(1件);3)キノリンキノン、インドールキノンに対する光照射とその挙動:国内学会発表(1件);4)生物活性天然物と各種誘導体と様々な合成中間体、及び部分構造単位の生物活性評価と開発候補の選出:国内学会発表(2件)、学術論文掲載(2件)
|