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2020 年度 実施状況報告書

アルツハイマー病克服を目指したβ-およびη-セクレターゼ阻害剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K06562
研究機関甲南大学

研究代表者

浜田 芳男  甲南大学, フロンティアサイエンス研究科, 特別研究員 (70424968)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワードβ-セクレターゼ / η-セクレターゼ / 酵素阻害剤 / アルツハイマー病 / 有機合成 / アミロイドβ
研究実績の概要

日本は急速に高齢化社会に移行しており、アルツハイマー病(AD)患者の増加は国家の基盤を揺るがす社会問題となっている。AD発症の原因物質であるとされているアミロイドβ(Aβ)ペプチドを標的とした治験薬は、脳内のAβ濃度を下げることには成功しているが、顕著な認知機能の改善は見られない。そこで本研究代表者は、第三のセクレターゼ経路であるη(イータ)-セクレターゼに着目して、β-セクレターゼおよびη-セクレターゼの阻害剤をを設計・開発することを目標とした。
第三のセクレターゼ(η-セクレターゼ)はβ-セクレターゼ阻害剤存在下では、APP(アミロイド前駆体蛋白質)の504位と505位のペプチド結合を切断し、続くα-セクレターゼの切断によりAηペプチドを産生させる。AηペプチドはAβより神経毒性が強いとされ、β-セクレターゼ阻害剤の臨床効果を相殺させる可能性がある。そこで本研究代表者はADの治療のためにはβ-セクレターゼを阻害すると同時に、第三のセクレターゼであるη-セクレターゼを阻害することが必要であると考えた。β-セクレターゼ阻害剤に関してはすでに強力な化合物の開発に成功している。これらの化合物は富士フイルム和光純薬(株)から研究用試薬として発売しており、AD発症メカニズム研究に大きく貢献している。さらに世界で最小のトリペプチド相当のβ-セクレターゼを阻害する低分子化合物も見出している。η-セクレターゼに関しては阻害剤のスクリーニングのためのFRET型合成基質を合成した。η-セクレターゼは膜結合型MMPの一つであるMT5-MMPであることが判明している。MT5-MMPのη-セクレターゼ活性を効率よく測定するため、η-セクレターゼによるAPPの切断部位のアミノ酸配列を参考にして3種類のFRET型合成基質を合成した。これらの基質を用いて、酵素阻害活性を評価し、いくつかの阻害剤を設計した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

日本は急速な高齢化によるアルツハイマー病(AD)患者の増加は国家の基盤を揺るがす社会問題となっている。AD発症の原因物質であるとされているアミロイド β(Aβ)を標的とした治験薬は、脳内のAβ濃度を下げることには成功しているが、顕著な認知機能の改善は見られない。そこで、すでに本研究者が開発しているβ-セクレターゼ阻害剤を基に臨床応用な化合物、および第三のセクレターゼ経路であるη(イータ)-セクレターゼに着目して、η-セクレターゼ阻害剤の両方の阻害剤をを設計・開発することを目標とした。η-セクレターゼはβ-セクレターゼ阻害剤存在下でAβより神経毒性が高いAηペプチドを産生させることが分かっており、両セクレターゼの阻害剤により効率的にADの進行を抑制することが期待される。①本研究代表者はβ-セクレターゼ(BACE1)阻害剤に関しては、すでに強力な化合物の開発に成功しており、富士フイルム和光純薬(株)から研究用試薬として発売している。さらにトリペプチド相当の低分子の阻害剤の開発にも成功している。これらの低分子化合物は血液・脳関門の透過性向上が期待される。②η-セクレターゼ阻害剤の開発についてはη-セクレターゼは膜結合型MMPの一つであるMT5-MMPであることが判明している。MT5-MMPのη-セクレターゼ活性を効率よく測定するため、η-セクレターゼによるAPPの切断部位のアミノ酸配列を参考にして3種類の測定用FRET型合成基質を合成し。MMPの切断機構を参考に、いくつかの阻害剤を設計しており、特許出願も考えている。以上のことから本研究課題においては、①低分子で実用性の高いβ-セクレターゼ阻害剤の開発に成功している②η-セクレターゼ阻害活性を効率的に測定できる3種類のFRET型合成基質を合成しており、いくつかの新規阻害剤を設計している。よって当初の計画通りに進展していると言える。

今後の研究の推進方策

①β-セクレターゼ阻害剤に関しては、新規な低分子化合物を設計している。実用的な治療薬を開発するためには血液・脳関門の透過性が重要な特性であり、より実用的な化合物を設計および選定する。新規化合物に関しては特許を取得する予定である。
②η-セクレターゼに関しては、阻害剤をスクリーニングするためのFRET型合成基質を合成しており、本合成基質を使ってη-セクレターゼ阻害剤を設計・合成した。MMPはコラーゲンなど多くの基質を認識しており、実用的なη-セクレターゼ阻害剤の開発にはさらなるドラッグデザインが必要であると思われる。
また、β-セクレターゼη-セクレターゼの両阻害剤により、神経毒性物質であるAβおよびAηペプチドの生理的機能が解明され、アルツハイマー病発症の原因解明に有用であると思われる。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルスの影響で、大学が長期休校や時短などが続いたため。
特に高額な組換え酵素は長期保存が不可能なため、購入を見送った。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (4件)

  • [雑誌論文] Synthesis of peptide-immobilized magnetic beads, and peptide reactivity assay for assessing skin sensitization utilizing chromophore2020

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Miyazaki, Hikaru Takaishi, Hidefumi Ikeda, Hideto Ariumi, Yoshio Hamada, Kunihiko Yamashita, Kenji Usui
    • 雑誌名

      Processes

      巻: 8 ページ: 1-10

    • DOI

      10.3390/pr8101257

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Mass spectrometry-based solid phase peptide reaction assay for detecting allergenicity using an immobilized peptide-conjugating photo-cleavable linker2020

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Miyazaki,Yasutaka Samejima, Kazuya Iwata,Yuuki Minamino, Shinya Hikida,Hideto Ariumi, Hidefumi Ikeda, Yoshio Hamada, Kunihiko Yamashita, Kenji Usui
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 21 ページ: 1-10

    • DOI

      10.3390/ijms21218332

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 本研究代表者のホームページ

    • URL

      https://sites.google.com/site/pynden/home

  • [備考] ACS Medicinal Chemistry Lettersの表紙絵に採用される。

    • URL

      https://pubs.acs.org/toc/amclct/3/3

  • [備考] F1000primeの推薦論文に選定されました。

    • URL

      https://f1000.com/prime/726181487

  • [備考] ACS Medicinal Chemistry Lettersのハイライト記事に紹介される。

    • URL

      https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/ml300036g

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公開日: 2021-12-27  

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