研究課題
本研究の目的は、「がん細胞の薬剤耐性の原因の一つと考えられているヘパラナーゼの分泌と酵素活性を指標とした阻害剤の探索系を構築し、それらを阻害する化合物を独自に開発した冬虫夏草を含む昆虫病原糸状菌代謝産物ライブラリーから探索し抗がん医薬品のシーズを獲得する」ことである。最終年度に実施した研究の成果及び研究機関全体を通じて実施した研究の成果:ヘパラナーゼの酵素活性を呈色試薬により検出する探索系を令和元年度に完成した。MDA-MB-231細胞破砕液とリコンビナントヘパラナーゼ酵素を酵素源として、酵素反応の基質として酵素の切断部位を含む5糖(Fondaparinux)と反応検出試薬を用いた探索系を確立した。このスクリーニング系を用いて、試験的に当研究所が保有する既知天然化合物ライブラリーから阻害剤を探索し数種の既知活性化合物を得ることができた。ヘパラナーゼ阻害剤スクリーニングの探索源として、冬虫夏草菌を含む昆虫病原糸状菌の微生物探索を行った。それらの菌を様々な場所から収集しその代謝産物ライブラリーを構築し、期間中ライブラリーの拡充を図ることができた。その代謝産物ライブラリーをもちいてヘパラナーゼ阻害剤の探索を行った。阻害剤スクリーニングに微生物代謝産物ブロスサンプルをもちいると、当初予想していなかった偽陽性が検出されることが明らかになったため、この探索系を補完する新たなスクリーニング系として、令和2年度は、新たにLC/MSを用いて酵素阻害を検出する系を構築した。また一方で、以前当研究所で見出されたヘパラナーゼ阻害剤Heparastatinの活性と構造の情報を基にHeparastatinの出発原料である天然物シアスタチンBを用い、不安定なメタンジアミン構造を安定化した構造へと変換した新たな阻害剤の合成に成功した。
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J. Antibiotics
巻: 74 ページ: 734-742
10.1038/s41429-021-00445-y
https://www.bikaken.or.jp/