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2020 年度 実施状況報告書

新たなユビキチンリガーゼをリクルートするプロテインノックダウン法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K06567
研究機関国立医薬品食品衛生研究所

研究代表者

大岡 伸通  国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 室長 (80568519)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード標的タンパク質分解 / E3リガーゼ / ユビキチン / プロテアソーム
研究実績の概要

近年、私達が開発したSNIPERもしくは海外のグループが開発したPROTACと呼ばれる化合物によって細胞内の標的タンパク質を選択的に分解する技術(プロテインノックダウン法)が確立され、新しい創薬技術として注目を浴びている。本研究は、プロテインノックダウン化合物の創製に利用できるE3リガーゼを拡充することで、この技術の汎用性をさらに高めることを目的とする。
昨年度までに、リガンド依存的に活性化するE3リガーゼとしての機能が知られている核内受容体arylhydrocarbon receptor(AhR)に対するリガンドの一つであるbeta-naphthoflavone(beta-NF)を利用して、CRABP-1やCRABP-2を分解する化合物を開発した。また、標的リガンドを置換することで、標的タンパク質をCRABPから別のタンパク質のBRDファミリーに変えてもAhR依存的な標的タンパク質分解が起こることを示し、このシステムの汎用性を明らかにした。さらに、これらの化合物が実際にAhRと標的タンパク質をクロスリンクし、AhR依存的な標的タンパク質のユビキチン化とプロテアソームによる分解を誘導することを明らかにした。今年度はこれら分解誘導剤の薬理活性に着目し、阻害剤と比較した時の利点について検証した。AhR依存的にBRDを分解する化合物beta-NF-JQ1により誘導されるがん細胞の増殖阻害活性に関して、リガンドに利用した阻害剤と比較したところ、分解誘導剤の方が有意に高い細胞増殖抑制活性を示すことがわかった。また、分解誘導剤は阻害剤よりも効果的にカスパーゼの活性化を誘導して、がん細胞死を誘導することを見出した。以上の検証により、阻害剤を標的リガンドに利用して分解誘導剤を開発することにより、さらに効果的な抗がん剤を開発できる可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画通り、AhRリガンドをE3リガンドとして利用したプロテインノックダウン化合物の薬理活性に着目し、阻害剤と比較した時の利点について検証したところ、分解誘導剤の方が有意に高い細胞増殖抑制活性を示すことを見出した。また、分解誘導剤は阻害剤よりも効果的にカスパーゼの活性化を誘導して、がん細胞死を誘導することを明らかにすることができた。これらのことから、本研究は順調に進行していると評価できる。

今後の研究の推進方策

今年度までに明らかにした、AhRをE3リガーゼに利用した分解誘導剤によるがん細胞の増殖阻害活性やカスパーゼの活性化を介した細胞死について、AhR依存的な標的タンパク質分解によって誘導されるのか検証する。

次年度使用額が生じた理由

次年度以降に繰り越しされる研究費が生じた理由としては、年度末の学会の参加費及び旅費が未精算であること、本年度の研究が概ね順調に進展したこと、他の競争的研究費を新たに獲得することができたことなどから無駄な物品費がかからなかったことが挙げられる。
繰り越し研究費の一部は本年度の未精算の学会参加費及び旅費に使用する予定である。また残りは、本年度の研究の進展から推測される次年度以降の研究計画を考えると物品費が多くかかることが予測されることから、物品費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Design and synthesis of peptide-based chimeric molecules to induce degradation of the estrogen and androgen receptors.2020

    • 著者名/発表者名
      Yokoo H, Ohoka N, Naito M, Demizu Y
    • 雑誌名

      Bioorg Med Chem.

      巻: 28 ページ: 115595

    • DOI

      10.1016/j.bmc.2020.115595.

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] Development of chimeric compounds to induce FLT3 degradation for acute myeloid leukemia.2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通, 柴田識人, 築茂由則, 内藤幹彦
    • 学会等名
      第79回日本癌学会総会
  • [学会発表] 急性骨髄性白血病に対するFLT3分解誘導キメラ化合物の開発2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通, 内藤幹彦
    • 学会等名
      第25回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] 1.Targeted protein degradation by chimeric small molecules that recruit new E3 ligase.2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通, 内藤幹彦
    • 学会等名
      第93回日本生化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] 非天然型アミノ酸を有するヘリカルペプチドを利用したタンパク質分解誘導キメラ分子の開発2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通,横尾英知,内藤幹彦,井上貴雄,出水庸介
    • 学会等名
      第43回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] ペプチドリガンドを利用したタンパク質分解誘導キメラ分子の開発2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通, 横尾英知, 井上貴雄, 出水庸介
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [学会発表] 核内受容体を標的とするペプチド型分解誘導剤の開発2020

    • 著者名/発表者名
      伊藤貴仁,横尾英知,大岡伸通,内藤幹彦,井上貴雄,出水庸介
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [学会発表] デコイ核酸をリガンドとしたエストロゲン受容体分解誘導剤の創製2020

    • 著者名/発表者名
      永沼美弥子,辻村はるな,大岡伸通,松野研司,須原義智,内藤幹彦,井上貴雄,辻厳一郎,出水庸介
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [学会発表] アプタマーをリガンドとしたエストロゲン受容体分解誘導剤の創製2020

    • 著者名/発表者名
      辻村はるな,永沼美弥子,大岡伸通,須原義智,松野研司,内藤幹彦,井上貴雄,辻厳一郎,出水庸介
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [学会発表] LXRを標的とした分解誘導剤の開発2020

    • 著者名/発表者名
      許涵喬,辻厳一郎,大岡伸通,内藤幹彦,出水庸介
    • 学会等名
      日本薬学会第141回年会
  • [図書] 実験医学増刊, 標的タンパク質を分解する新しい低分子医薬モダリティ2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通, 内藤幹彦
    • 総ページ数
      7
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-0389-3
  • [図書] 実験医学2020年9月号, キメラ化合物PROTAC/SNIPERの作用機序と新たな開発の動向2020

    • 著者名/発表者名
      大岡伸通, 内藤幹彦
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      羊土社
    • ISBN
      978-4-7581-2535-2
  • [備考] 国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部 ホームページ

    • URL

      http://www.nihs.go.jp/mtgt/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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