研究実績の概要 |
人工脂質のフッ素化は、物理的・化学的な安定性を付与し、膜タンパク質の組み込みにも有用であることを示してきた。人工脂質/膜タンパク質複合体構築に向けた高配向秩序で適度な膜流動性を有する人工脂質膜を、多重積層アレー双極子(SDA)モデルに基づき設計した部分フッ素化人工脂質を開発する。 種々の条件検討により確立した合成経路を基に、ペルフルオロへプチル(n=7、F(CF2)7)基を含むジミリストイルホスファチジルコリン(Fn-DMPC: n = 4, 6, 7, 8)およびジパルミトイルホスファチジルコリン(Fn-DPPC: n = 4, 6, 7, 8)からなる部分フッ素化人工脂質ライブラリーを作製した。 部分フッ素化ジミリストイルホスファチジルコリン(Fn-DMPC: n = 4, 6, 7, 8)およびジパルミトイルホスファチジルコリン(Fn-DPPC: n = 4, 6, 7, 8)を用いた膜物性および再構成膜の評価において、得られた実験結果を詳細に評価したところ、二鎖型のリン脂質でも一鎖型の分子の場合と同様にフッ素導入量多重積層アレー双極子(SDA)モデルを支持する結果が得られた。 また、Fn-DPPCにおいて非常に興味深い結果が得られた。すなわち、二鎖型のリン脂質ではF6-DPPCおよびF8-DPPCにおいて脂質膜の熱安定性が向上し、さらに膜タンパク質バクテリオロドプシン(bR)の再構成膜においては,bR三量体の熱安定性が著しく向上することが分かった。 脂質膜中のbRの挙動の観察は、部分フッ素化人工脂質の基盤技術開発において重要であることを示唆している。
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