研究実績の概要 |
タンパク質分子表面における化合物との相互作用は一般的には脆く、そうした相互作用を通じてタンパク質の機能に影響を与えることは難しい。しかし、近年その必要性が高まっているタンパク質-タンパク質間相互作用阻害化合物はタンパク質分子の表面に作用する必要があるため、タンパク質分子表面を標的とする阻害化合物の探索研究は注目を集めている。そこで、本研究ではそうした課題に取り組むために計算機を利用した新たな阻害化合物探索法あるいは解析法の構築に取り組んだ。 本課題ではまずD-アミノ酸酸化酵素(DAO)の分子表面等の部位を標的とする阻害剤の探索に取り組んだ。これまでの我々の化合物結合サイト探索研究の結果、FAD結合サイト周辺がDAO分子表面における阻害剤結合のための候補サイトの1つとして考えられた。そこで、そうしたサイトを標的とした多段階バーチャルスクリーニング手法を含む計算アプローチにより阻害化合物の絞り込みを行い、さらには生化学実験により阻害活性を見出した。 また並行して取り組んだ酵素阻害剤の探索研究や解析研究において分子動力学、結晶構造解析等の手法を導入し、阻害化合物と標的酵素の相互作用について詳細な機構解析を行うことに成功した(Kato et al. 2018, 2021)。さらにDAOの表面ループの研究に取り組み、こうした表面構造が実際にDAOの活性に影響を及ぼすことも明らかにした。(Rachadech W, Kato Y et al. 2020) 2023年度は、上記の経験と成果を活かし分子動力学と機械学習の技術を導入し、DAO分子表面に結合する阻害化合物の多様なドッキングポーズの評価を行うことで、より詳細な阻害機構の解明に取り組んだ。こうした成果は新たな投稿論文として取りまとめ発表を計画している。
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