研究課題/領域番号 |
18K06581
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森本 浩之 九州大学, 薬学研究院, 講師 (20593867)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 有機合成化学 / 無保護イミン / 四置換炭素 / アミノ酸 / 不斉合成 / 触媒 / グリーンケミストリー |
研究実績の概要 |
環状ペプチドなどの中分子が新たな医薬品シーズとして注目される現在の医薬化学研究において、加水分解を受けにくく強固な三次元構造を構築可能な新規非天然アミノ酸類の化学合成法の開拓は重要な研究課題である。しかし、従来の非天然アミノ酸類合成法は最終生成物に不要な保護基の利用を前提としており、無保護アミノ酸類の直接合成は困難であった。そこで本研究では、研究代表者が見出した無保護の基質を用いる新たな戦略に基づき、幅広い無保護非天然アミノ酸類を直接合成可能とする新規環境調和型触媒反応の開発を行った。 上記の方針に基づき研究を遂行した結果、本年度は以下の成果が得られた。まず、無保護α-ケチミノエステルに対する直接的触媒的不斉Friedel-Crafts型反応の開発に成功し、抗HIV活性を有する四置換炭素含有アミノ酸誘導体の直接合成を実現した。本反応では、従来用いられてきた対称型の触媒とは異なり、非対称型の新規触媒を用いることが高い選択性を実現する上で重要であり、その選択性の起源を反応機構解析およびDFT計算により明らかにした。また、イサチン由来の無保護ケチミンに対する脱炭酸型触媒的不斉Mannich型反応の開発にも成功し、生物活性物質の(+)-AG041Rの短工程合成を実現した。 以上の研究により、従来必要であった保護・脱保護工程を省いて短工程化と廃棄物の低減化を実現するとともに、得られた無保護の非天然アミノ酸類を活用した化合物ライブラリ構築および生物活性物質の短工程合成を実施することで、創薬化学における本手法の有用性を実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究により、無保護イミンを用いた2つの新たな触媒反応を実現し、論文発表に結びつけることができた。また、いずれの反応においても、化合物ライブラリ構築および生物活性物質の短工程合成を実施することができた。以上の成果から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後については、無保護イミンに対する反応のさらなる展開を進めていく。特に、これまで無保護イミンでは実現が困難であった反応についても積極的に研究を展開し、非天然アミノ酸ライブラリのさらなる拡充と、生物活性物質の環境調和型合成の確立を目指して検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初の計画よりも試薬などの物品費を抑えることができたため、次年度使用額が生じた。一方で、次年度は触媒反応開発に必要な金属試薬などの購入が予定されており、次年度使用額を含めて使用していく予定である。
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