研究課題/領域番号 |
18K06582
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
栗山 正巳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (40411087)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 酸化反応 / 化学選択性 / カルベン / 遷移金属 / 触媒反応 |
研究実績の概要 |
1.新規N-ヘテロ環状カルベン配位子前駆体の開発:酸化されやすい多様な官能基の共存下でも十分な触媒性能と選択性を発現する触媒系を確立するためにN-ヘテロ環状カルベン配位子前駆体の開発を行った。主配位部であるカルベン部位に加えて副配位部となるヘテロ原子を含有する配位子前駆体や立体的な効果を検証するためにかさ高さが調節された配位子前駆体を合成した。これらの配位子前駆体の基本構造については、これまでに十分な研究蓄積のあるPd-arene相互作用を組み込んだ設計を採用した。本配位子前駆体合成では、ワンポット型反応によるイミダゾール合成とイミダゾールのアルキル化を経た2段階の短工程ルートを採用しており、効率的に多様なN-ヘテロ環状カルベン配位子前駆体を合成することに成功した。
2.N-ヘテロ環状カルベン配位子前駆体の触媒的酸化における評価:新規に開発した配位子前駆体とこれまでに開発してきた配位子前駆体をアルコール類の選択的酸化に適用した。このとき、パラジウム錯体の存在下において含窒素複素環を有するアルコール類を基質として用いた。触媒的カップリング反応においてはかさ高い配位子が有効に機能する報告が多いが、この化学選択的酸化法においては立体的な大きさよりも副配位部から得られた効果が反応促進や選択性の向上において重要であった。詳細な検討により、副配位部のヘテロ原子として窒素や硫黄よりも酸素が適していることが明らかとなった。より安価なニッケル錯体に関しても触媒としての適用を試みたが十分な結果を得るには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応開発の鍵となる配位子前駆体の開発と検討がおおむね完了した。予想とは異なる展開となった部分もあったが研究計画の全体的な進行にはあまり影響が出ていない。
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今後の研究の推進方策 |
配位子前駆体の開発と検討により触媒系や反応条件の最適化が順調に進んでおり、今後はこの知見を基盤として基質の検討へと移ると共に応用性の高い酸化的変換へと展開をはかっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
配位子前駆体の開発と検討において予想と異なる展開となり計画を一部修正した影響が出ている。配位子前駆体に関してより掘り下げた検討を行うと共に基質の検討においてより実用的なものまで含めて実施していくことにより改善をはかる。
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