研究課題/領域番号 |
18K06584
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小西 英之 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (20565618)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 毒性ガス / 等価体 / 一酸化炭素 / 二酸化硫黄 / 安全 / 実用的 |
研究実績の概要 |
毒性ガス等価体を用いる安全かつ簡便な有機合成手法の開発を目指し、3つの反応開発に取り組んだ。 一酸化炭素等価体を用いるカルボニル化を伴う還元的カップリング反応による非対称ケトン合成法の開発では、再現性の問題に直面したが、新しい触媒系の開発によりこれを克服することができた。 二酸化硫黄等価体を用いるスルホンおよびスルホキシド合成法の開発において、当初計画していたものとは異なる反応機構で得られたと考えられる対称スルホンの合成法の開発を行った。また、昨年度見出した二酸化硫黄等価体がSO2源ではなくS源として機能する反応を詳細に検討し、少しではあるが収率を向上させることができた。さらに、二酸化硫黄等価体を用いる新たなS原子導入型反応を見出し、80%以上の高収率で進行する反応条件を見出した。これらの反応は過去に類を見ないものであり、二酸化硫黄等価体を用いて異なる酸化段階のS原子を導入する新規反応として学術的にも極めて重要な反応を見出したと言える。 一酸化炭素等価体を用いる開放系でのカルボニル化反応では、溶媒と塩基の適切な選択により目的物が高収率で得られる反応条件を確立することができた。さらに基質一般性の検討、ワンポット誘導体化を行い、開放系でも閉鎖系で行う場合と遜色ない収率で種々のカルボン酸誘導体が得られることを見出した。これは、気体状分子である一酸化炭素が関与する開放系反応の初の例であり、従来の気体状分子が関与する気液二相反応を液相反応へと転換したという点において学術的に意義のある成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
還元的カルボニル化反応については計画よりもやや進捗が遅れたが、それ以外では二酸化硫黄等価体を用いる新規反応の発見や開放系カルボニル化の開発など、研究が予想以上に進んだ。したがって、本研究は達成に向けて順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である3年目となる今年度は以下の検討を行う。 (1)非対称ケトン合成法の開発:新たに開発した新触媒系を中心に検討を行い、目的物の収率の向上や新たな基質の組み合わせによる基質一般性拡大を目指す。また、光触媒を用いる反応の実現の可能性についても詳細に検討を検討を行う。 (2)アリールスルホネートからアルデヒドを得る手法の開発:一酸化炭素等価体を用いて、フェノール類から容易に得られるアリールスルホネートの還元的カルボニル化反応の開発を行い、これまであまり例のなかった変換反応の開発を目指す。 (3)二酸化硫黄等価体を用いる新規S原子導入型反応の開発:二酸化硫黄等価体を用いて、還元的条件の利用による異なる酸化段階の硫黄原子の導入反応の検討を行う。特に、S原子導入型反応は他に例を見ないものであるため、重点的に反応開発検討を行う。 (4)毒性ガス等価体を用いる開放系反応の開発:論文執筆に向けて、速度論的検討や分光学的検討を行い、本反応の進行や想定反応機構を支持する実験的証拠の獲得を目指す。また、他のカルボニル化反応や、二酸化硫黄等価体を用いる反応についても、開放系において進行するような反応条件を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)研究を遂行するにあたり、研究室内にすでにある試薬や器具を用いて研究を行っており、購入が必要な試薬や実験器具、装置が少なかったため。また、想定よりも学会参加数が少なかったため。 (計画)試薬やガラス器具等を購入する予定である。また、古くなった真空ポンプを更新する計画である。さらに、新型コロナウイルス対策のため学会がオンラインで開催されることが予想されるが、旅費がかからないため積極的に参加したいと考えている。
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