研究課題
北里研究所において見いだされたLuminamicinは、C. difficileに対し、選択的かつ強力な抗菌活性を示す。また、Luminamicinは他の天然物にない無水マレイン酸に共役したエノールエーテルを含む14員環ラクトンに加え、酸素架橋構造含有シスデカリン骨格と三置換オレフィン含有10員環ラクトンがそれぞれ縮環した極めて特異な構造を有していることから、有機合成化学の観点からも魅力的なターゲットである。本テーマではその全合成経路の確立を目的に研究を行った。上記のようにLuminamicinは複雑な構造を持つことから、その全合成には多段階の反応を要し、また全合成の鍵中間体の供給が研究全体の律速段階になることが予想された。そこで、当研究所が有する微生物発酵技術を活かした戦略を立案した。すなわち、市販の出発原料から全合成の鍵中間体の合成を行う一方、Luminamicin生産菌の大量培養により天然物を取得したのち、分解反応によって全合成鍵中間体を合成する。そしてその鍵中間体からS,O-アセタール化及びマクロラクトン化を経由して、Luminamicinの全合成を目指した。また、この微生物培養を利用した合成戦略をとることで、全合成ルートと天然物の分解によるルートの双方からの多様な誘導体合成による構造活性相関の解明が期待できるため、有用な戦略といえる。その結果、市販品である出発原料から鍵中間体までの合成経路の確立を達成し、更に微生物培養により得られる微生物由来Luminamicinの分解経路による同一鍵中間体の合成経路の確立に成功した。今のところ低収率ではあるものの、その鍵中間体からLuminamicinの再構築が達成できたことから、その全合成経路を確立することが出来た。
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