研究課題/領域番号 |
18K06587
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
鈴木 由美子 上智大学, 理工学部, 准教授 (20295546)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 蛍光プローブ / キナゾリン / 分子認識 |
研究実績の概要 |
将来的に生命現象の解明や診断医療の革新に貢献することを目指し研究を開始した。研究代表者らが発見した新規蛍光団・2-アミノキナゾリンを基盤として、生体内分子を対象とする蛍光プローブの設計と合成、機能評価を行った。 当該年度は、金属イオン認識能を持つ発光性および消光性蛍光プローブの開発を目指し、金属認識部であるジピコリルアミンのキナゾリン骨格への導入を試みた。 金属イオン応答型・発光性蛍光プローブとして、縮合ベンゼン部にジピコリルアミンを持つ化合物の合成に取り組んだが、目的物の生成に至っていない。 金属応答により消光性を示すキナゾリン誘導体として、ピリミジン部の2位にジピコリル基を導入した誘導体を数種類合成した。このうち、強い傾向性を有する誘導誘導体に関して、様々なpH条件下における蛍光特性を評価し、生理条件に近いpHにて最大の蛍光強度を示すことが分かった。この誘導体は銅イオンに応答し、消光した。本金属錯体は、二リン酸、三リン酸類に応答し、蛍光の回復が観察されたが、モノリン酸類には応答しなかった。観察された蛍光の回復は、金属イオンととリン酸基との相互作用により、ジピコリルアミンの金属イオンへの配意が弱まったことに起因すると考えた。シクロデキストリンの存在下では、発光強度が大きく、シクロデキストリンの内側疎水性部への蛍光団の取り込みが示唆された。この包接型のプローブにおいても、金属イオン添加による蛍光の消光と、二リン酸、三リン酸類との相互作用による蛍光の回復が観察された。 さらに、ATPのアデノシンと相互作用する原子団で修飾したシクロデキストリンを用い、ATPの選択的認識を目指した。しかし、修飾によるシクロデキストリン分子の歪みにより、蛍光団はシクロデキストリンに内包されなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、金属イオン認識部位としてジピコリルアミンをキナゾリン環に導入することで、銅イオン選択的に応答し、消光する化合物を合成できた。このキナゾリン・銅錯体の溶液に、二リン酸類および三リン酸類を添加すると、蛍光が回復し、ある程度の分子認識能を示すプローブを得ることができた。 金属認識により発光するタイプのプローブ合成には至らなかった点は、計画に対しやや遅れが認められる。 しかし、シクロデキストリンをホスト分子として用いる機能評価まで到達できたという点では、当初の計画より順調に進んでいる。 ゆえに、おおむね順調に進展しているということができる。
|
今後の研究の推進方策 |
次の5点を検討する。 1.修飾シクロデキストリンに取り込まれることができるよう、より単純な構造を有するキナゾリン蛍光団を合成し、機能を評価する。 2.目的認識分子に合わせ、修飾シクロデキストリンの構造をデザインし合成する。 3.ジピコリルアミンの導入位置を変更し、金属認識により発光するプローブを合成する。 4.液性(pH)に応答し、異なる波長にて発光・消光する化合物を設計し、pHセンサーとしての利用を検討する。 5.抗がんなどの生物活性と蛍光性を併せ持つ化合物を利用して、細胞内の挙動を蛍光顕微鏡にて観察し、標的分子の同定に用いる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
少額を有効に使用するため、次年度に使用する。
|