研究代表者らが発見した新規蛍光団・2-アミノキナゾリンを基盤とする、蛍光プローブの設計と合成、機能評価を行った。 ベンゾイレン尿素を出発物質として、アザクラウンエーテルが結合した蛍光性キナゾリンを4工程にて合成した。アザクラウンエーテルはその窒素原子にてキナゾリンの2位に結合させた。キナゾリン環2位のアミノ基の存在が蛍光性に必須であり、アザクラウンエーテルは蛍光性をもたせるための置換基であり、かつ、分子・イオン認識部位でもある。このキナゾリン-アザクラウンエーテルは、アセトニトリル溶液中、マグネシウム、銅、亜鉛イオンの添加に応答し、蛍光が消光した。これは、アザクラウンエーテル環への金属イオンの配位を示唆する。1H-NMR測定においても、マグネシウムイオンと亜鉛イオン存在下、クラウンエーテル環の水素に相当するシグナルが大きくシフトし、これら金属イオンとキナゾリン蛍光団の相互作用を確認することができた。他の複数のアルカリ金属とアルカリ土類金属に対しては蛍光消光がみられなかったため、マグネシウムイオン選択的な金属イオンセンサーとして本蛍光団の利用が期待される。 キナゾリン蛍光団のUV吸収、励起状態について、理論化学計算を利用し解析した。Gaussian G16プログラムにて、HF法、MP2法、汎関数B3LYPまたはM062Xを用いたDFT法にて構造最適化および分子軌道の計算を行った。励起状態の解析では、TDDFT計算と比較し、SAC-CI法が実験結果を良く再現した。
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