研究課題/領域番号 |
18K06589
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
田口 博明 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (20549068)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗体酵素 / タウオパチー / ペプチド / 抗体医薬 |
研究実績の概要 |
当該年度は①抗体酵素を誘導する抗原の合成と②加水分解活性を測定するためのFRET基質の合成を行った。 ①昨年度タウタンパク質が過剰にリン酸化され、タウ凝集体形成や神経細胞毒性を発現するために必要である部分配列を精査することにより分子設計を行い、合成に着手していたTau(12-23)-LysP(OPh)2とTau(285-297)-LysP(OPh)2を引き続き行った。今年度はリン酸ジフェニルステル部分の合成、ペプチド部分とリン酸エステルとの縮合、マレイミド構造を含むリンカーを用いペプチド性リン酸エステルを、キャリアタンパクと結合し複合体を形成させた抗原を合成する計画であった。昨年度難航したペプチド部分の構築は、合成法を改良することにより、高純度で目的物を得ることができ、抗原合成を行うのに十分な量の合成が行われた。リン酸部分(LysP(OPh)2)の合成は、重要中間体であるdiBocで保護されたアミノアルコール体の合成において、選択的な保護基の導入法を種々検討した。しかしながら、目的物の収率を改善することができず、選択的な保護基の導入から段階的な合成法に切り替えて検討を行った結果、反応を行うステップは増えたが、十分な目的物を得るための経路が確立された。 ②免疫により得られた抗体の加水分解活性を測定するためのFRET基質の合成を行った。FRET基質は、Lys24またはLys298のC端側での加水分解が検出できるようにTau(19-30)とTau(292-305)をペプチド部分とし、そのN端側に蛍光部分をC端部分に消光部分を配置した分子設計を行った。合成はリンクアミドレジンを用い、消光部分にはジニトロフェニル基を、蛍光部分にはクマリン誘導体を用いたFmoc固相合成法により行った。合成した保護ペプチドを脱保護したのち、HPLCと質量分析を用いて分析した結果、目的物を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
リン酸ジフェニルエステル部分の反応条件の検討や合成経路の変更により、ペプチド部分と縮合するリン酸部分の合成が若干遅れた。その結果、抗原の合成を完遂することができなかった。現在、計画の完遂にむけて合成が進行中である。一方、得られた抗体酵素をスクリーニングする準備は順調に進んでいる。また、これら得られた結果の一部を、第56回ペプチド討論会、第38回日本認知症学会学術集会、日本薬学会第140年会にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策は、該当年度に達成されなかった抗原の合成を完遂し、動物実験を速やかに行い、得られた抗体を評価することです。抗原の合成は十分量のリン酸ジフェニルエステルを得たのち、ペプチド部分との縮合を行いタウペプチドリン酸ジエステルへと導きます。得られたタウペプチドリン酸ジエステルは、キャリアタンパクと二機能リンカーを用いて複合体とすることにより抗原を合成します。得られた抗原をアジュバントと混合し、マウスに腹腔内投与し、数回の投与後、採血により得られた血清中の抗タウ抗体をELISA法にて測定します。抗タウ抗体の産生が確認された場合、血清よりプロテインGまたは抗マウスIgMを固定したアフィニティークロマトグラフィにてIgGおよびIgMを精製し、得られIgGおよびIgMについて加水分解活性や凝集抑制作用を検討する予定です。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、2020年に予定していた学会が新型コロナウイルスのため開催中止となり、学会参加費として計上していた旅費を使用できなかったために生じました。また新型コロナウイルスのため、年度末までの納品が困難であった試薬や器具が生じたためです。 これら次年度使用額は、今年度の成果発表の参加費や旅費の一部および納品が間に合わなかった試薬や器具の購入費として使用予定であります。
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