令和3年度はタウタンパク質の部分構造を含むペプチド性リン酸ジフェニルエステル誘導体の合成を行った。昨年度まで過剰にリン酸化されたタウタンパク質が、タウ凝集体形成や神経細胞毒性の発現に関与していると考えられている部分配列を含んだ保護ペプチドの合成条件を種々検討してきた。その成果として、収率および純度が改善された保護ペプチド合成の条件を確立した。今年度は、抗原認識部位と酵素活性誘導部位を有する3種類のペプチド性リン酸ジフェニルエステル誘導体の合成を引き続き行った。昨年度までの成果を活用し、保護Cys-Tau(12-23)-OHと保護Cys-Tau(285-297)-OHを合成した。それらを用い保護Cys-Tau(285-297)-LysP(OPh)2および保護Cys-Tau(12-23)-LysP(OPh)2の合成を行った。まず初めに、昨年合成済みであるCys-Tau(382-394)-LysP(OPh)2の最終脱保護を行い、全ての保護基を除去した。粗生成物をHPLCで分析したところ複数のピークが見られ、それらを質量分析装置で分析した結果、目的物を確認することができなかった。そこで、保護体をHPLCで精製した後、リン酸ジフェニルエステルと縮合することにより、保護体を合成した。保護体の最終脱保護を行い、粗生成物をHPLCで分析したところ複数のピークが見られた。ピークを質量分析装置で分析した結果、Cys-Tau(12-23)-LysP(OPh)2を確認することができたが、その他については最終物を確認することができなかった。詳細な質量分析結果の解析より、最終脱保護中に副反応が起こり目的物質より質量の小さい分子が生成していることが判明した。今後は最終脱保護条件を検討し、得られたペプチド性リン酸ジフェニルエステルをキャリアタンパクと結合し、免疫抗原を完成する予定である。
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