研究課題/領域番号 |
18K06593
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
清水 広介 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 准教授 (30423841)
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研究分担者 |
浅井 知浩 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00381731)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / 自己抗原修飾リポソーム / 実験的自己免疫性脳脊髄炎 / 脾臓 / T細胞 / 多発性硬化症 / フィンゴリモド / 神経免疫疾患 |
研究実績の概要 |
令和元年度(平成31年度)は、EAEマウスにおいて高い治療効果を示したMOG-LipDOXの作用機序解明に向け、EAEに関与するT細胞サブセットへの影響について調べた。特にEAEの発症・進行には、エフェクターT細胞であるTh1細胞やTh17細胞の存在が大きく関与しており、また制御性T細胞であるTreg細胞が抑制的に働くことも知られているため、これらT細胞への影響に着目した。実験は、投与を行なったEAEマウスから脾臓を採取し、各種抗体(ヘルパーT細胞:CD4;Th1細胞:IFN-γ;Th2細胞:IL-4;Th17細胞:IL-17;Treg細胞:FOXP3)を用いて各T細胞を同定し、FACSにより解析を行なった。この結果、MOG-LipDOXを投与することで、Th17細胞数はPBS投与群に比べて有意に減少し、Th1細胞についても減少する傾向にあった。Th2細胞に関しては、PBS投与群とMOG-LipDOX投与群との間に差は見られなかった。一方でTreg細胞に関しては、MOG-LipDOX投与により、その数が有意に増加した。 また平成30年度に調製法を確立したフィンゴリモド内封リポソームについて、自己抗原を修飾したリポソーム製剤(MOG-LipFin)を調製し、EAEマウスに対する治療効果の検討を行なった。投与量としてはフィンゴリモド投与量で0.1 mg/kg/dayとした。この結果、フィンゴリモド単剤やMOG未修飾のフィンゴリモド封入リポソーム投与群では、運動機能障害に対する改善効果がほとんど見られなかったのに対し、MOG-LipFinを投与した群においては有意に改善されることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度(平成31年度)の研究計画は、MOG-LipDOXの作用機序解析ならびにフィンゴリモド内封リポソームの治療効果の検討であった。これに対し研究成果として、MOG-LipDOXがEAEの発症や進行に関与するT細胞群に影響を与え、EAEに対する高い治療効果を示すことを明らかとし、また内封薬物をMSの治療薬として用いられているフィンゴリモドに変更した際も、自己抗原修飾リポソームを薬物キャリアとして用いることでEAEに対して高い治療効果を示すことを明らかとした。よって当初の研究計画どおり順調に研究は進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究期間の最終年度であり、当初の計画通り進める予定である。これまで用いてきた自己免疫疾患モデルは、MOGを自己抗原として用いて誘導する一時進行型多発性硬化症(PPMS)のモデルであった。多発性硬化症の多くは再発寛解を繰り返す症例がほとんどであるため、今年度は再発寛解型多発性硬化症(RRMS)に対する治療について検討を行う予定である。またこれまでの成果について、学術雑誌への投稿も予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に実施を予定していた自己抗原修飾リポソームの自己抗原認識T細胞への取り込み実験について条件検討の段階であり、一方でフィンゴリモドを用いた検討を優先して行なったため、本実験が実施できず次期使用額が生じてしまった。 最適な実施条件が整う次年度に研究費を費やして実験を行い、当初の研究計画に沿って最終的に研究を達成する予定である。
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