研究課題/領域番号 |
18K06599
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
岸川 直哉 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (90336181)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | チロシン / 化学発光 / ルミノール / 紫外線照射 / 光反応 |
研究実績の概要 |
タンパク質は生命維持に関わる重要な生体分子であり、その効果的な定量・解析法は様々な分野で必要とされている。タンパク質を構成するアミノ酸の中でもチロシンは、様々な酵素の標的となるアミノ酸残基であり、チロシン変換酵素が種々の疾患に関与することが知られている。このようなことから、チロシンに特化した分析法は、疾患の発症機構の解明や早期診断法の開発に有用であると考えられる。我々はこれまでに、化学発光試薬であるルミノール誘導体のとチロシンとの混合溶液に紫外線照射を行うという単純な操作で、チロシン濃度に応じて増大する発光が観察されることを見出した。そこで、この現象を利用するチロシンの簡便・迅速な化学発光分析法の開発を試みた。マイクロプレートリーダーによるチロシンの化学発光分析法を確立するために、化学発光試薬濃度、紫外線照射波長、測定波長及び測定時間といった各種条件の最適化を行った。最適条件下で、チロシンの検量線を作成したところ 0.1-100 μM の濃度範囲においてチロシン濃度と化学発光強度の間に相関係数 r=0.998 の良好な直線関係が得られ、0.1 μM の検出下限 (blank + 3SD) が得られた。本法の選択性を評価するために、20 種類のアミノ酸の発光を測定したところ、チロシンのみで強い発光が得られるという結果であったことから、本法はチロシンに極めて選択的であることが確認された。さらに、チロシンの構造の一部が変化した修飾チロシンについて同様に測定を行なった結果、チロシンと比較して発光強度の著しい減弱が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チロシンとルミノールの混液に紫外線を照射することで強い発光が生じるという我々がはじめて見出した現象を、当初の予定通りにチロシンの簡便かつ迅速な化学発光マイクロプレートアッセイ開発へと応用することに成功した。また、本法においてほとんどのアミノ酸は発光応答を示さずにチロシンのみが選択的に検出されることが明らかにできた。さらに、チロシンとわずかに構造が異なる類縁体であってもその発光強度が極めて弱いことも確認された。本年度の検討で得られた結果は、本研究の目的であるチロシン含有生体成分の高選択的分析法の開発やチロシン変換酵素の活性測定法の開発に有用であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の検討により、チロシンの化学発光マイクロプレートアッセイを開発できたことから、同様の手法によりオキシトシンといった生体にとって重要なチロシンペプチドの化学発光分析法の開発を行い、血液等の生体試料へ応用していく。また、チロシンの産生・代謝・修飾に関連する種々の酵素の活性を、本法による化学発光量の増大あるいは減弱に基づいて評価する手法の開発についても進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室に現有の装置と試薬を用いての検討が可能であったため。今後、酵素活性測定を目的とするマイクロプレートアッセイの開発に必要な器具・試薬の購入に充てる予定である。
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