研究課題/領域番号 |
18K06602
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
笹井 泰志 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (60336633)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | バイオコンジュゲーション / 高分子-酵素複合体 / 温度応答性高分子 / グラフト共重合体 |
研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質医薬品の体内動態改善に有効なタンパク質のポリエチレングリコール(PEG)修飾について、位置特異的かつ効率的な反応を触媒する再利用可能な温度応答性高分子-酵素(microbial transglutaminase: mTGase)コンジュゲートの合成について検討を進めている。 本課題では、酵素修飾用高分子として、温度応答性側鎖を持つ櫛型高分子(グラフト共重合体)を提案しており、その合成および物性評価も重要検討項目としていた。H30 年度に採用していたvinylmethylether-alt-maleic acid copolymer(VEMAC)の主鎖上カルボキシル基から、上限臨界溶液温度(UCST)を有するpoly(sulfobetaine methacrylate)(PSBMA)側鎖を伸長させた櫛型高分子の合成条件に問題があることが明らかとなったため、R1年度は、まず、その解決に努めた。その結果、側鎖(PSBMA)鎖長の制御に可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を用いる合成戦略を採用することで、解決できた。本条件で合成した櫛型高分子の温度応答性による可逆的な溶解-粒子化(凝集)およびその粒子サイズを評価し、mTGaseとのコンジュゲートに使用する候補高分子の選定を行った。その結果、当初より目標としていた約20℃にUCSTを示し、かつ、UCST未満では、表面に高密度のカルボキシル基を持つ平均粒子径約150nmの粒度分布もつ櫛型高分子を合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、櫛型高分子の合成条件を再検討する必要があったため、遅れが生じた。しかしながら、これは、比較的初期に解決できたため、その遅れは取り戻せつつある。 次に、H30年度と同様の状況であるが、当初、購入を予定していたmTGaseが入手できなくなったため、99%以上が添加物成分である食品加工用の製品から、mTGaseを単離・精製せざるを得ない状況であり、mTGaseを用いた検討が制限されたためである。
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今後の研究の推進方策 |
mTGaseは高額となるが入手ルートを開拓できた。最終年度であることも考慮し、当該製品を購入して、高分子-mTGaseコンジュゲートの合成を進めていく。合成における検討項目は、縮合剤の選択、反応系に使用する緩衝液の選択、温度、時間であるが、コンジュゲートの酵素活性、およびその安定性を指標に、これまでの経験に基づき、最適条件を見出していく。最適化されたコンジュゲートについて、モデルタンパク質医薬品として、adenosine deaminase(ADA)、α-lactalbumin(αLA)、granulocytecolony stimulating factor(G-CSF)を用い、PEG化への適用を検討する。HPLC、SDS-PAGEおよび質量分析からPEG鎖の導入位置選択性を評価する。さらに、コンジュゲートの繰り返し使用についても検討を行う。以上の結果を総合的に解析し、コンジュゲートの最適化を行うことで、タンパク質医薬品の位置選択的PEG化を触媒する、繰り返し使用が可能なコンジュゲートを見出すことで、当初の目標の達成を目指す。
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